洋書

□The Sacrifice of Mortal Priestess
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――か弱い種は日の光を長く待ち続ける


「何だか、あなたたちを見てると、スパーダもこんなに人間くさかったのかって思うわね」
レディはくつくつと笑った。
「こいつと一緒にするな」
「なっ…!バージルが父さんに似てねーだけだろ!」
「親父と貴様を一緒にするな、おこがましい」
「テメンニグルおったてたあんたに言われたくないね!」


――暗い冬は去り、春がやってくる


「ほら、喧嘩しないで。せっかくいいこと教えてくれたのに」
正直言って“悪魔”という存在は、これからも許せない。
だが、悪魔のような人間もいれば、人間のような悪魔もいる。
そして、両方の心を知る彼らがいる。
多分、スパーダはそういう存在だったのだ。
そんな“涙する悪魔”であれば、信じたいと思う。


――私の種たちは、再び空を見上げることでしょう


涙は人間に与えられた恩寵。
そして、心を持つ悪魔に許された贈り物。
愛する者のために涙を流す悪魔だって、いる。
「じゃあ、私、そろそろ行くわ」
「お、おう。弾倉は大丈夫か?」
「勿論よ。お邪魔したわね、バージル」
「お前の一助になったなら、それでいい」
最近の彼は随分と穏やかになったと思う。
それが“本当の”バージルなのではないかと感じながら、レディは腰を上げる。
ふと視線を転じると、ひときわ丁寧に装飾された壁の一角、美しい微笑を浮かべた女性の写真が掲げられている。

「ありがとう」

レディの呟きに、微笑するダンテと、静かに目を伏せるバージル。
それは、悪魔も泣き出す館に捧げられた、静かな感謝だった。




――私は知っています。この子たちが力強く育ってゆくことを




end

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