――か弱い種は日の光を長く待ち続ける 「何だか、あなたたちを見てると、スパーダもこんなに人間くさかったのかって思うわね」 レディはくつくつと笑った。 「こいつと一緒にするな」 「なっ…!バージルが父さんに似てねーだけだろ!」 「親父と貴様を一緒にするな、おこがましい」 「テメンニグルおったてたあんたに言われたくないね!」 ――暗い冬は去り、春がやってくる 「ほら、喧嘩しないで。せっかくいいこと教えてくれたのに」 正直言って“悪魔”という存在は、これからも許せない。 だが、悪魔のような人間もいれば、人間のような悪魔もいる。 そして、両方の心を知る彼らがいる。 多分、スパーダはそういう存在だったのだ。 そんな“涙する悪魔”であれば、信じたいと思う。 ――私の種たちは、再び空を見上げることでしょう 涙は人間に与えられた恩寵。 そして、心を持つ悪魔に許された贈り物。 愛する者のために涙を流す悪魔だって、いる。 「じゃあ、私、そろそろ行くわ」 「お、おう。弾倉は大丈夫か?」 「勿論よ。お邪魔したわね、バージル」 「お前の一助になったなら、それでいい」 最近の彼は随分と穏やかになったと思う。 それが“本当の”バージルなのではないかと感じながら、レディは腰を上げる。 ふと視線を転じると、ひときわ丁寧に装飾された壁の一角、美しい微笑を浮かべた女性の写真が掲げられている。 「ありがとう」 レディの呟きに、微笑するダンテと、静かに目を伏せるバージル。 それは、悪魔も泣き出す館に捧げられた、静かな感謝だった。 ――私は知っています。この子たちが力強く育ってゆくことを end |