その疑問をぶつけてみたら、ストロベリーサンデーをがっついていた大男は、イチゴをかじりながら笑い飛ばした。 自分の父親のことだというのに レディは呆れて、ダンテを睨んだ。 「真面目に聞いてるのよ」 「生まれてないのに、んなこと解んねえよ」 クリームを拭いながら、にやっと笑う。 「お前のご先祖ってのがすごい美人で、お互いぞっこんになって血の契約、なーんてな゛っッがハッっ!!」 銀髪の頭がいきなり前にのめり、語尾がおかしな具合につぶれた。 が、半魔のタフさ、すぐさま原因の方を振り返る。 「なにもラウンドトリップするこたないだろうが!」 視線と抗議の先には、画集へ目を落としたままのバージルがいた。手元には、いつのまに移動したのかフォースエッジ。 「おい、聞いてんのか、バージル!」 「うるさい。黙れ。峰打ちも避けられんのか、クズが」 視線を本から離さぬまま、事も無げに罵詈雑言を投げつける兄。 ダンテがいじけて静かになったところで、ようやく、バージルは顔を上げた。 「レディ」 あっさりと呼ばれ、かえってレディは緊張を覚えた。 冷徹な眼差しが身体を捉え、氷のように透る声が心を縛る、そんな錯覚。 バージルという男を前にすると、氷の扉に手を触れているような気分になる。 「レディ、この世で心を読める存在があるとすれば、それは神だけだ」 「どういうこと?」 「親父の考えなどわからん。考えようとも思わなかった」 不本意だがな、と、バージルは弟を一瞥した。 ダンテの方は、兄が自分と同じことを考えていたと知り、にやりと笑っている。 「スパーダが、ただ自由を求めただけであれば、魔界を一人で封じ込めるほどの力を、ともに捨て去ろうとはしないだろう」 レディは頷く。 「あるいは、その巫女の献身が、スパーダの心を打ったのかもしれない」 呟くように語るバージルの、言葉の端々に、どこか柔らかな感情が響く。 1年前には、けして感じなかった、確かな“心”を感じさせる、そんな声。 |