洋書

□this is Christmas
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“さあ、今日はクリスマスだ
 あんたに希望があらんことを
 近しい人や大切な人へ、老いも若きも”


この真冬の夜空へ引っぱり出されたと思ったら、いきなり抱きかかえられ教会の尖塔の上へ。

今、眼下には、黒いビロードの上に宝石箱をひっくり返したような、見たこともない街が横たわっている。

たとえ、そこが汚濁であっても、宝石のようなきらめきを映す夜がある。
周囲のあらゆる者から疎まれながらも、持てるだけの財をかき集め、偉大なる唯ひとり人の足を清めた、罪深くも聖なる女のように。


“今日は幸せなクリスマス
 弱くても強くても
 金持ちでも貧乏でも
 世の中そんなに悪かない”


身を切るような冷たい風の中で、街はますますくっきりと輝いている。
そこに見える瓊珠が、下に深々と罪の汚泥を沈めていたとしても――そこにも確かに、何かの光を映しているに違いない。
じっと、街を見つめている彼の隣では、弟が陽気に歌を口ずさんでいる。

実に、楽しそうに。


“だって今日はめでたいクリスマス
 あんたに良い年が来ますように!
 またひとつ、いいことがあるといいよな
 心配するなって”



「楽しそうだな」
静かな言葉に、うきうきとした小さな歌声が、止まった。
「楽しいさ」
こちらを向く弟の顔は、余裕と満足そうな笑顔に満ちている。
「あんたと二人っきりのクリスマスだ」
おまけに、と、大きな手が肩を抱く。
その力は、がっしりと温かい。
「あんたと、この景色を二人占めだ」
どうだと言わんばかりの表情は、それこそ子供のときから変わらない。

二人っきりの秘密を作りたがる。
他愛ない、小さな小さな、けれど、この世でたった二人しか知らない秘密を。

「まったく、お前は――」
小さく笑いをもらす兄の横顔を見て、よく笑うようになったと、弟はまたほんの少し嬉しくなる。
これは、彼だけの秘密だ。

「ここは悪くない」
「だろ?」

彼らの立つ神の家から、華やかな歌声が響いてくる。
しんしんと静まる冬の聖夜に。


“そう、今日はすばらしいクリスマス!
 そして良いお年を!
 少しずつ、よくなっていくさ
 心配いらないよ”










25/12/2011



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