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□天稟の子
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それは、なにげない好奇心――有体にいえば、気まぐれだった。

呉の廷臣たちを呼んで、彼らの旧主の行状を聞いた。
自分の飼っている貴人が、言後に絶するような殺戮を繰り広げたことを、知らないわけではない。
ただ、本当に気まぐれな思いつきに過ぎなかった。
そのはずだった。
「帰命侯は、灼熱に焼いた鋸で罪人を挽き殺させたというが…それは本当か?」
はっ、と、呉の旧臣たちは体を震わせた。
それは取りも直さず、おぞましい噂が真実であったことを示すものだ。
だが、それだけではなかった。
目を伏せた彼らの中から、突如として、押し殺した慟哭が響いた。

――なぜ泣くのか。

問うも愚かなことだが、問わずにはいられなかった。
願わくは、忌まわしい予感が外れるようにと。
憤りに目を充血させた若者が、顔を上げた。
「殺されたのは、私の父でございます」
まるで、玉座の天子が、かつての虐君だとでもいうように、彼は叫んだ。
「帰命侯は……あの暴君は、罪も無い我が父を嬲り殺したのです!」



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