それは、なにげない好奇心――有体にいえば、気まぐれだった。 呉の廷臣たちを呼んで、彼らの旧主の行状を聞いた。 自分の飼っている貴人が、言後に絶するような殺戮を繰り広げたことを、知らないわけではない。 ただ、本当に気まぐれな思いつきに過ぎなかった。 そのはずだった。 「帰命侯は、灼熱に焼いた鋸で罪人を挽き殺させたというが…それは本当か?」 はっ、と、呉の旧臣たちは体を震わせた。 それは取りも直さず、おぞましい噂が真実であったことを示すものだ。 だが、それだけではなかった。 目を伏せた彼らの中から、突如として、押し殺した慟哭が響いた。 ――なぜ泣くのか。 問うも愚かなことだが、問わずにはいられなかった。 願わくは、忌まわしい予感が外れるようにと。 憤りに目を充血させた若者が、顔を上げた。 「殺されたのは、私の父でございます」 まるで、玉座の天子が、かつての虐君だとでもいうように、彼は叫んだ。 「帰命侯は……あの暴君は、罪も無い我が父を嬲り殺したのです!」 |