書架

□紅粧
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幼い日、宮中で、それは美しい少年に出会った。
瑞々しくまろい頬は抜けるように白く、ほんのり刷かれた白粉が粉雪のよう。
ふっくらとした唇には紅がのせられ、つやつやと照りはえていた。
くちづけすれば、弾むように柔らかかった。





緩やかに美しい弧を描く唇を、食む。
あの時とは異なる、成熟した弾力。
感触が心地よくて、幾度もついばみ、舐め、吸い上げる。
すると、温かなふくらみが、いらうように、応えるように、優しくうごめいた。
「そういえば、紅もよくお似合いでしたな」
唇を僅かに離してからかえば、途端、相手の唇がぶつかってきて口封じする。
「わらわべの話だ」
「いいえ、今でもきっと、お似合いですよ…」
そっ、と紅をかすめた指が差し出される。
灯火の明かりに艶々ときらめくそれに、曹叡はゆっくりと唇を開いた。
皓い歯の奥にちらりと濡れ光る舌先を見たとき、先程までの淫靡な戯れを思い出し、熱い痺れが走った。
とろりとした光沢がのせられていく。
唇を弄い撫でた指が、細い首や透けるような胸元――そこへ散らされた口づけの痕へ、下りていく。
「…っ、子元…」
戸惑ったような反応が、いっそう司馬師の心をくすぐる。
恥じらいながらも、触れる指先の淡い熱を拒もうとはしないのだ、この人は。




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