幼い日、宮中で、それは美しい少年に出会った。 瑞々しくまろい頬は抜けるように白く、ほんのり刷かれた白粉が粉雪のよう。 ふっくらとした唇には紅がのせられ、つやつやと照りはえていた。 くちづけすれば、弾むように柔らかかった。 緩やかに美しい弧を描く唇を、食む。 あの時とは異なる、成熟した弾力。 感触が心地よくて、幾度もついばみ、舐め、吸い上げる。 すると、温かなふくらみが、いらうように、応えるように、優しくうごめいた。 「そういえば、紅もよくお似合いでしたな」 唇を僅かに離してからかえば、途端、相手の唇がぶつかってきて口封じする。 「わらわべの話だ」 「いいえ、今でもきっと、お似合いですよ…」 そっ、と紅をかすめた指が差し出される。 灯火の明かりに艶々ときらめくそれに、曹叡はゆっくりと唇を開いた。 皓い歯の奥にちらりと濡れ光る舌先を見たとき、先程までの淫靡な戯れを思い出し、熱い痺れが走った。 とろりとした光沢がのせられていく。 唇を弄い撫でた指が、細い首や透けるような胸元――そこへ散らされた口づけの痕へ、下りていく。 「…っ、子元…」 戸惑ったような反応が、いっそう司馬師の心をくすぐる。 恥じらいながらも、触れる指先の淡い熱を拒もうとはしないのだ、この人は。 |