書架

□黄昏
1ページ/4ページ


「ああ、賈梁道どの!神霊がおわすなら御存知のはずです!私がどれほど大魏の忠臣であるか!」



一体、何百人になっただろうか。
今日という一日、京師に首を晒された者たちは。
年寄りは言うに及ばず、他家に嫁いだ女たちや、やっと立ち上がることができた幼児まで。

――ああ、またか……。

鳥禽に辱められる首を、もはや慣れという無関心に覆われた虚ろな目で、人々は見やっていった。
だが、その虚ろなまなざしの中には、確かに漠然とした不安が巣食っていた。

烈祖が崩じてからというもの、魏の朝廷では目に見えて司馬家の勢いが盛んであった。
権勢を阻むと見なされれば、容赦のない族誅で以て報いられた。
相次ぐ政争と族誅は、国の動揺している証。治まりきれていないことの証左。
それは少しずつ、人々が気付きもしない間に、「お上のことは関係ない」と考えている間にも、心に潜在的な不安と恐怖を注いでいくものだった。

本能では解っているのだ。
乱世が終わるのは、長く遠い先であると。

――無為自然に身を委ねよ。俗世を離れ、自由に遊べ。

人々の願望によって理想化された虚無が、京師を、そして一国を覆っていく。

それは新たなる社稷の浸蝕と、知ってか知らずか。



.
次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ