まるまるとした白い頬を、おそるおそる、つついてみる。 柔らかくみずみずしい、愛しい感触。 と、赤子はにぱっと表情を輝かせ、笑い出した。 目をしばたかせる年下の夫に、甄宓は微笑んだ。 「抱いてごらんなさいませ」 「あ、ああ…」 返事をしたものの。 「なあ、宓」 「はい?」 「その…男が抱いても潰れんだろうな…?」 「勿論です、優しくお抱きになれば」 「泣いたりしないか…?」 「大丈夫です、今はとても機嫌がよいですから」 「い、今は…!?」 さあ、と促され、曹丕は恐る恐る、小さなまるまっちい我が子を抱き取る。 意外と上手い。首が据わるように抱いている。 赤ん坊も、抱き心地が変わったのか不思議そうな顔だが、泣きもせず、黒くて大きな瞳で父親を見つめている。 「ほら、大丈夫でしたでしょう?」 甄宓は莞爾と微笑んだ。 「なあ、宓」 「はい」 「意外に賢そうな顔だな、こいつ」 「もちろんです。あなたのお子ですもの」 あっさり言われて、曹丕は照れたような、困ったような表情になる。 「男子は母に似るというぞ。おい、よかったな」 と、ふにんとした顔で見上げてくる息子へ言う。 「お前の母は中原一の美女だ。きっと、令君よりも好い男になるぞ」 目を細めて、頑是無い赤ん坊に言う姿からは、普段の冷たさは微塵も感じられない。 ふと、彼は甄宓に向き直った。 「宓、この子の名前が決まった」 彼女は頷く。 「“叡”だ」 「美しい名前ですわね」 「うん。さっきも言ったろう?賢そうな子だ」 そう言って、もう一度、赤ん坊の顔を覗き込んだ。 「叡……」 |