書架

□玉牀
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それは、薄曇りの午後だったと思う。
「叡さん、今から、内緒の遊びをしない?」
一番、仲の良かった叔父が、そう誘いかけてきた。
叔父というより、年の離れた兄のようで、ともすれば、多忙で不在がちの実の父よりも、はるかに頻繁に会っている。
いつも楽しげに笑っている人で、笑うたびに長く垂らした前髪が揺れた。
その美しい黒髪が、幼い頃から記憶の確かな一部分を流れている。
「内緒の…?」
「ふふっ、そうだよ…兄さんにも、嫂様にも、誰にも秘密…」
ね、と長い前髪が揺れる。
「叡さんは、守れるかな…?」
色の抜けるように白い人だ。
微笑んだ顔の美しさに魅了されたのかもしれない。

「はい」

確かに、返事をしてしまったのだから。


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