――雍丘へ行きたい。 疲労の色濃い表情で呟かれた天子の言葉に、陳群は静かに頷き、一礼した。 間も無く、宮城より勅使が発し、一路雍丘へと向かった。 行幸の報にも、曹植はなんら驚くことなく使者を迎えた。 「然るべきお支度をもって迎えられませ」 お解かりでしょうな、とぶしつけに付け足す監国たちの言葉に、曹植は 「余計な仕儀は不要」 とだけ言い置いた。 監国たちは半ば呆れ、半ば冷笑して、不遇な皇弟を見やった。儀礼を軽んじて今日の境遇に至った者が何を言う、と。 「いくら殿下といえども、これ以上、陛下のご 不興をかっては、ただではすみませんぞ」 半ば脅迫するような言葉にも、しかし、曹植は首を振った。 「陛下は何も望んではおられないのですから」 |