霜降が過ぎれば、朝に夕に刺すような寒さが続く。 いつものように、外から聞こえる調練の声で目覚めたが、布の隙間から入ってくる寒気に、思わず衾を被り直した。 別天地のようなぬくもりから顔だけ出し、恐る恐る、室内を見渡す。 床に火鉢が置いてあるのを確認すると、そろそろと足を糸履の上へ置いた。 卓上に置かれた絹織りの袍を羽織ると、履をぷらぷらとひっかけ、しばらく火鉢の上で足を温める。 その間もずっと、綺窓の外からは勇ましい掛け声や気勢が聞こえてくる。 馬蹄の音も混じっている。 きっと、降りる霜よりなお冷たく輝く髪をした男が、兵を鍛えているはずだ。 董白は寐台から降りると、窓辺へと近寄った。 綺の張られた飾り窓には、まだ、うっすらと霜がはり付いている。 開けようか、開けまいか。 迷ったが、結局、開けないまま寝室を出た。 |