写本

□董嬌饒
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 霜降が過ぎれば、朝に夕に刺すような寒さが続く。
 いつものように、外から聞こえる調練の声で目覚めたが、布の隙間から入ってくる寒気に、思わず衾を被り直した。
 別天地のようなぬくもりから顔だけ出し、恐る恐る、室内を見渡す。
 床に火鉢が置いてあるのを確認すると、そろそろと足を糸履の上へ置いた。
 卓上に置かれた絹織りの袍を羽織ると、履をぷらぷらとひっかけ、しばらく火鉢の上で足を温める。

 その間もずっと、綺窓の外からは勇ましい掛け声や気勢が聞こえてくる。
 馬蹄の音も混じっている。
 きっと、降りる霜よりなお冷たく輝く髪をした男が、兵を鍛えているはずだ。

 董白は寐台から降りると、窓辺へと近寄った。
綺の張られた飾り窓には、まだ、うっすらと霜がはり付いている。
 開けようか、開けまいか。
 迷ったが、結局、開けないまま寝室を出た。




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