写本・第二

□あつはなつい
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真夏の過ごし方in魏軍




「暑い…暑いぞ夏侯惇…」
「わかっている…」
「おぬし、今から嵯峨野まで行って子桓を呼び戻して来い!」
「無茶言うな!大体、奉孝とつまらん諍いを起こした挙句、行かんと言ったのはお前だろう!」
「わしのせいじゃないもん!」
「お前、いくつだっ!」

暑さのあまりつまらない喧嘩を繰り広げる曹操たちを遠目に、夏侯淵は濡れ縁の板にべったりと突っ伏している。
「あ゙〜〜、それにしてもあっちぃな、おい……」
若いながら既にメタb…もとい、恰幅のよさに定評のある夏侯淵にとって、華北の夏とは全く異なる“湿度を伴った暑さ”は過酷な環境である。
「司馬懿殿も織田家に行ってしまいましたからねぇ」
日本が誇る発明品・扇子を動かしながら、張郃がほうっと溜息をつく。
だいぶ温んでしまった盥の水をぴしゃんと跳ね上げ、かんかんと照りつける日差しに目を細める。

太陽はようやく中天を過ぎたばかり。
これから、じりじりと焦がすような西日へと変わっていくと思うと、汗もかかぬ美しき征西将軍とて気が滅入る。
「ねえ、将軍…」
「んぁ?」
「私たちも取りましょうか、休暇…」
「おうよ…」

逃げ水をぼんやり見つめながら、二人はそろって溜息をついた。





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