写本・第二

□紅裾
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赤い錦に紅い更紗が贈られてきた。
それで、打掛と内衣の一揃いを作らせた。
めったにしない贅沢。
袖を通せば、束の間、胸の奥に小さく鮮やかな華やぎが灯った。

「よう、似合うている」

眩い輝きを見るように、夫は目を細めて、そう言った。
心から誉めてくれているのは、解っている。
「そうか」
「ああ、お前にふさわしい。ほんとうに似合うている」
「ああ」
ぶっきらぼうに答えて、紅絹で縫い取られた裾をさばく。
くるりと背を向けて去っていく自分の後姿に、夫がいつものように優しい微苦笑を浮かべている様子は、容易に想像できた。

別に、賛美されることを望んでいたわけではない。
ただ、見てもらいたかっただけなのだ。
そのはずだった。
そして、夫はそれを誉めてくれた。
よく似合う、と。
それだのに、胸底に灼けるような疼きがわだかまっているのは、なぜだろう。




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