赤い錦に紅い更紗が贈られてきた。 それで、打掛と内衣の一揃いを作らせた。 めったにしない贅沢。 袖を通せば、束の間、胸の奥に小さく鮮やかな華やぎが灯った。 「よう、似合うている」 眩い輝きを見るように、夫は目を細めて、そう言った。 心から誉めてくれているのは、解っている。 「そうか」 「ああ、お前にふさわしい。ほんとうに似合うている」 「ああ」 ぶっきらぼうに答えて、紅絹で縫い取られた裾をさばく。 くるりと背を向けて去っていく自分の後姿に、夫がいつものように優しい微苦笑を浮かべている様子は、容易に想像できた。 別に、賛美されることを望んでいたわけではない。 ただ、見てもらいたかっただけなのだ。 そのはずだった。 そして、夫はそれを誉めてくれた。 よく似合う、と。 それだのに、胸底に灼けるような疼きがわだかまっているのは、なぜだろう。 |