写本・第二

□一餐百笑
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「悪いことしないよう、ずっと見張っててあげるね」


満足げに頷く女主の笑顔を見たとき、三成は内心、頭を抱えた

――えらいことになった…

ねねは確かにできた女性である。
統率力、判断力、人望、人を指揮する者としての資質はすべて備わっている。
それは認める。

だが。

「こら、奉孝!またご飯を残して…悪い子だね!」
「そんな山盛りによそわれても食い切れません!」
「しっかり食べないと、戦で力が出ないよ!」

――頼むから羽柴の流儀を押し通さんで下され…!

いつ一触即発の事態が起こるかと肝を冷やす三成をよそに。

「おねね様の飯は旨いだなぁ」
「うむ!魚も菜も絶品だわい」
「質実でいて、ほのかな隠し味の風味…美しき心遣いですね」
「残さず食べなきゃ、罰があたるってもんだよ」

魏軍の食卓は極めて和やかだった。

「おーい、ねね!」
「なんだい?淵ちゃん」
「この瓜の漬け物、もう少しくれねえか?」
「姐さん、俺にも頼むぜ!」
「あらぁ、嬉しいね。よし、鰯も付けたげるよ!」

膳の真ん中、ねねと共に陣取った大きな飯櫃やお菜の大皿は、あっというまに空になっていく。




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