「悪いことしないよう、ずっと見張っててあげるね」 満足げに頷く女主の笑顔を見たとき、三成は内心、頭を抱えた ――えらいことになった… ねねは確かにできた女性である。 統率力、判断力、人望、人を指揮する者としての資質はすべて備わっている。 それは認める。 だが。 「こら、奉孝!またご飯を残して…悪い子だね!」 「そんな山盛りによそわれても食い切れません!」 「しっかり食べないと、戦で力が出ないよ!」 ――頼むから羽柴の流儀を押し通さんで下され…! いつ一触即発の事態が起こるかと肝を冷やす三成をよそに。 「おねね様の飯は旨いだなぁ」 「うむ!魚も菜も絶品だわい」 「質実でいて、ほのかな隠し味の風味…美しき心遣いですね」 「残さず食べなきゃ、罰があたるってもんだよ」 魏軍の食卓は極めて和やかだった。 「おーい、ねね!」 「なんだい?淵ちゃん」 「この瓜の漬け物、もう少しくれねえか?」 「姐さん、俺にも頼むぜ!」 「あらぁ、嬉しいね。よし、鰯も付けたげるよ!」 膳の真ん中、ねねと共に陣取った大きな飯櫃やお菜の大皿は、あっというまに空になっていく。 |