写本・第二

□論理応変
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「は…?」

お前は何故、行かなかったのか。

そう問われて、郭嘉は小首をかしげた。
「何故、そんなことをお聞きになるんです…?」
訝しげに眉をひそめて問えば、主もまた、同じように眉をひそめた。
「お前ほど、父の意を見抜き、意に適う者はいない。それなのに、何故、と聞いた」
郭嘉は軽く溜息をつき、曹丕の目を見つめた。
「わかりませんね、若君の仰ることは…。今、殿はおられないんだ、いない御方を求めて放浪したって、仕方が無いでしょう」
それに、と、いきなり目と鼻の先へ顔を近づけてくる。
「今、私が仕えたいと思うのは、貴方なんですよ、若君。理由はそれだけだ」
曹丕の目が細まった。
「それじゃ、ご不満?」
にんまりと眼前で笑う軍師。
その仕草、その振る舞いは、まるで猫。
しかし、ひとたび動けば、その智謀は虎や獅子をもねじ伏せる。
勝てるか、己は。
自分を使いこなせとせまる、この天才に。
白い喉が、くっと、かすかな笑いに動いた。


「使って、くれよう」
「望むところです」







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