写本・第二

□孅婉
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「言って欲しいのだろう?…“美しい”と…」
「何を…ばかな…」
「嘘なものか、お前は求めている…可愛い顔で、なあ……」

“女”として

「欲しいんだろう?」

“美しい”と

――愛されたいのだ。



反駁するより早く、唇を唇がかすめた。
「――ッ!」
鋭く息を詰めたァ千代の唇に、触れるか触れぬか元親は顔を寄せた。
「俺がくれてやろうか、ァ千代」
お前の主ほど優しくはないが、と笑う。
あからさまな挑発、恐ろしく魅惑的な作り物の微笑。
だまされるようなァ千代ではないと知っていて、わざと下品な―少なくとも彼女はそう思っている―口調でからかっている。

「欲しい、と言えばいい…素直に、その口で…」
「そ、んな……!」

恥ずかしいことができるか、とは言えなかった。
元親は見抜いている。
何もかも知っていて、ァ千代を翻弄する。

「ねだってみよ…なあ、お嬢…」

耳朶を低い声がくすぐった。
元親の顔が更に近づく。
銀の前髪が触れた。









→あとがき

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