公孫瓚と劉備の付き合いは、長い。 少なくとも近い考えを持っているようだし、劉備自身もそう思っているふしがある。 初対面で人を信用することのない公孫瓚としては珍しく、変なやつだと思いながらも、この男に興味を持った。 これが彼の持つ天性の魅力というものかもしれない。 そう言ったら、劉備は笑って手を振った。 「違いますよ」 「違う?」 公孫瓚がいささか憮然としていると、劉備はにこにこ笑いながら、言った。 「互いに引き合っているんですよ」 そういうものなのだろうか。 「だから、伯珪兄が私に興味を持ってくださったというなら、私もあなたに惹きつけられているということです」 「そう、か……」 自分に惹かれる――その言葉は純粋に嬉しかった。 裏表のある性格を隠さないというのに、なぜか、劉備のことは信じられるのがおもしろい。 「お前は面白い。愉快とか、そういう程度ではなくて、もっと知りたくなって仕方ない。そんな人間じゃ、お前は…」 公孫瓚が素直にそう言えば、劉備は少し驚いたように目を開いた。 いささか照れくさくなった。 「いい、忘れろ」 ぶっきらぼうに言って、自室へ戻ろうとするのを、劉備はあわてて首を振った。 「いえ…!失礼しました、違うんですよ!」 「これ、着いてくるな、俺は今から自習するのに」 「じゃあ、私もお供しますよ?」 「最初から勉学する気のないお前が、何を言うか」 「えぇ!ひどいなあ」 「どうしても部屋へ入りたいなら、酒のひとつでも持って来い。ただし、夜中にな」 くるりと背を向けた後ろで、劉備がいたずらっぽい笑顔を浮かべていることなど、公孫瓚にはお見通しだった。 |