写本・大戦

□天啓白馬
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「勝てるか」
「さて…」
砂埃の向こう、柵をめぐらせ沈黙する城壁を見やる。
「わからん、五分だな」
そう言って首を振って見せれば、銀の針を鏤めたような瞳が笑った。
「お前にしては慎重すぎる」
「手があるのか」
相変わらず強気な発言に、孫堅がいささか苦笑して尋ねれば。
「ない」
あっさりと、不敵な笑顔で返された。
ふわりと銀の髪がたなびき、美しき倣岸な白馬将軍は馬を進め始める。
「勝てぬ戦は嫌いか?」
「当然だ」
「俺は好きじゃ」
強烈な日差しの光輝を浴びて、戦に猛る美貌が鮮やかに輝いた。
「俺でなくば覆せぬ戦をするのが、好きじゃ」
いつの間にか、馬は駆けるほどの速さになっている。
「お前も好きだろう、己の力が勝ちへ導くような戦が…のう、文台!?」
言い残すや、馬上の佳人は鋭く掛け声を発し、純白の駿馬が駆け抜けていく。
「言ってくれる、伯珪め…!」
愉快そうに笑うと、孫堅も後を追うように馬へ鞭を下ろした。

突撃の喚声が砂漠へ響く。
開戦の幕が開いた。

さあ、蹴散らしてやろうではないか。
俺とお前で。
俺はその瞬間が、最も好きなのだ。








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