「勝てるか」 「さて…」 砂埃の向こう、柵をめぐらせ沈黙する城壁を見やる。 「わからん、五分だな」 そう言って首を振って見せれば、銀の針を鏤めたような瞳が笑った。 「お前にしては慎重すぎる」 「手があるのか」 相変わらず強気な発言に、孫堅がいささか苦笑して尋ねれば。 「ない」 あっさりと、不敵な笑顔で返された。 ふわりと銀の髪がたなびき、美しき倣岸な白馬将軍は馬を進め始める。 「勝てぬ戦は嫌いか?」 「当然だ」 「俺は好きじゃ」 強烈な日差しの光輝を浴びて、戦に猛る美貌が鮮やかに輝いた。 「俺でなくば覆せぬ戦をするのが、好きじゃ」 いつの間にか、馬は駆けるほどの速さになっている。 「お前も好きだろう、己の力が勝ちへ導くような戦が…のう、文台!?」 言い残すや、馬上の佳人は鋭く掛け声を発し、純白の駿馬が駆け抜けていく。 「言ってくれる、伯珪め…!」 愉快そうに笑うと、孫堅も後を追うように馬へ鞭を下ろした。 突撃の喚声が砂漠へ響く。 開戦の幕が開いた。 さあ、蹴散らしてやろうではないか。 俺とお前で。 俺はその瞬間が、最も好きなのだ。 |