荒々しい余韻を、公孫瓚はまるで人事のように感じていた。 疲れきった熱い体も、迎え入れたままの男の体も、自分が流した涙も、何もかも遠い気がする。 うつろな赤い瞳が、暁の光を映した。 そこで初めて、自分を支配する熱い肉体、覆いかぶさる男の重みに気付いた。 「おいおい……ずいぶんと冷めてるな」 身を起こしながら、劉備は苦笑した。体だけは熱く燃え上がっているのに、心は上の空というのは、公孫瓚にはよくあることだった。 「今度は何を考えてたんだ?ん?」 笑いながら問われても、答えようがない。 何を、と言われても、別段、難しいことを考えていたわけではない。ただ、何も考えず、何となしに集中できないだけなのだから。 だのに、愛撫にはすぐさま燃え上がり、熱い蠢きに応えてしまう、己の体が忌々しい。 それが自分の体に刻まれた、ぬぐいがたい過去の証として残るのだから。 「あ……」 生温かいものが下肢から這い出ていく。 ぞろりとこすれる感触に身震いした。嫌悪ではなく、一抹の快美のために。 ますます、厭になる。 「構いやしない、むしろ、いいことじゃねえか」 優しく頭を撫でられて、公孫瓚は身を震わせた。 心の内を見透かされたような気分だった。 「愉しいか?」 「ん、こういうのがか?」 愉しいよ、と即答された。 「伯珪は愉しくないか?」 「いや…」 「だったら、何が?」 「…お前は何が良くて、俺を抱くのだろうかと思ってな」 一瞬、劉備は目を丸くした。 次いで、くつくつと笑いながら、再び公孫瓚を抱き寄せた。 「決まってる」 いたずらっぽい囁きが、耳朶をくすぐった。 「あんたが好きだからさ」 その後に訪れた激しい奔流に、抗うすべはもはや公孫瓚にはなかった。 |