合戦の後、沖合いに茫々といくつもの火が立ち上がる。 それは時によって色が違う。 鬼火のような青白い炎かと思えば、昼の瀬戸海のような美しい碧色の時もあり、赤々と燃える時もある。 どうして違うのかは、わからない。 ただ、戦の終わった後に見える、それは確かだ。 肥州では不知火といって、沖合いに火が見えるという。 あの炎は、どれとも違う。 亡魂の名残を惜しむ火か、海に眠る死者たちが新仏を送るのか、それとも、瀬戸海の神霊が悼んでいるのか。 それも知りようが無い。 ただ、戦の後、茫々と沖に燃える。 勝鬨が聞こえる。 敵の勝利を告げ、味方の敗北を告げる声が。 足元を揺るがす歓声に手元を狂わされた。 そう思いたかった。 忌まわしい蛇に踊らされていたなどと、信じたくない。 「上総介様…!」 悲鳴のように叫び放たれた最後の一弾を、白鑞の撥が涼やかな音を立てて凪払った。 そのまま撥を投げつけて銃身を弾き飛ばすと、素手のまま帰蝶の間合いへ飛び込んだ。 いかに元親が華奢でも、不意を突かれた女ひとり、組み伏せるのはたやすい。 「殺しなさい」 覚悟を決めた者が見せる美しい眼光のもと、彼女はそう言う。 だが、この哀れな蝶は真実を知るべきだった。 「戦は終わりだ。あんたも来い、徒に死ぬこともあるまいよ」 静かな淵の底、激しい魂を燃やす男の目を、帰蝶は見つめた。 「……ここで私を助けても、私は必ず上総介様のもとへ帰る。その命のままにお前たちを滅ぼすかもしれない……それでもいいの…」 その答えに、元親は満足そうに目を細める。 彼女は意志したのだ。地を這おうとも生き長らえ、愛しい男のもとへたどり着くと。 元親が愛するのは結果の是非ではない。意志されたか否かだ。 「命運に抗う者へ道は拓く。溺れる蝶よ――お前は何に縋る」 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー 無双元親×BASARA濃姫、舞台は本能寺暗殺行あたり。 濃姫は、妲己の幻術で“信長は瀕死の重傷を負って遠呂智に捕らわれている”と騙され、いやいや働いています(本物の信長は遠地で魔王健在) 元親と戦って真実を知り、さてどうする、てな事態に。 このアダルティーなふたりが書きたかったがための組み合わせ。 所属は魏軍あたり。 |