「そろそろ、勝負ついたか?」 清正は、囲碁に見立てた陣絵図の上に白石を置く。自軍の配置だ。 「敵方は相当、焦っているようだ」 城を囲む黒石は、城の防備の薄い場所を重点的に攻めようとしている。 「子孝さんよぉ、その配置はまずいだろ」 「うん?」 「あんたがやると、敵が強すぎる」 にやっと、人懐っこい笑顔になると、清正は黒石を城の三方に密集させた。 「ふむ、確かに…」 籠城からひと月余り経つが、敵方の作戦も何もあったものではない力づくの攻め様には、清正も曹仁も首を傾げる。 「力押しで攻めりゃいいってもんでもないだろうに」 「奴らはそのように調練されているようだ。おぬしは運がいい」 「まったくだ。同じ“豊臣”でも、ありゃひでえ」 この世界には、眼前の百戦錬磨の将軍のような古代の英雄たちのみならず、“異世界の英雄”たちも融合しているらしい。 だが、清正が最も誇りに思う“豊臣家”は、性質が違う。 力ずくで全てを従わせるやり方に、清正は最初から、あちらの豊臣軍には加わらぬと決めている。 「そろそろ挨拶しに行くか…」 「無謀な行動は慎まれよ」 「ああ。…けど、敵の総大将が“三成”って聞いたら、まあ面くらいは見とかねえとな」 |