洋書

□We'll come home for Holy Day
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「なあ、バージル」
「どうした」
「今日は花のイヴだよな」
「そうだな」

「それなのにパーティーのお相手が悪魔かよ!」
「俺に言うな、年を越すための貴重な仕事だと思え」

廃屋の豪邸で、双子の悪魔狩人はハードなイヴを過ごしていた
床らしい床もない腐った羽目板の上を、わらわら湧いて出てくる悪魔相手に立ち回らなければならない。

「Damn!Damn!」

やけっぱちで愛器をぶちかまし、大剣でなぎ倒す――というより叩き潰していくダンテ。
そんな弟に溜息をつきながら、魔力の剣と落雷を嵐のように下級悪魔へと叩きつけていくバージル。
片っ端からなぎ倒されて塵芥と消える悪魔。

確かに派手ではある。
が。
やはり、華やかさの欠片もない夜である。




依頼を終えて帰る頃には、日付はすっかりイヴからクリスマスへと変わっていた。
寝静まった街でも、いたるところでツリーが輝き、あるいはキャンドルが灯され、やわらかな明かりの下で聖家族が羊飼いや賢者の礼拝を受けている。

「なあ、バージル」
「どうした」
「ガキの頃さ、サンタクロースが俺たちのとこにも来るかって、試したよな」
「お前一人が乗り気だった記憶があるがな」
「マジ?……あー、でも、あんたそういうとこはクールだったよなあ、昔から」
「お前はそういうところは単純だったな、昔から」
「うるせーよ!」

サンタクロースが、半魔である自分のもとへもやってくるのか、知りたくて。
イヴの夜はベッドに入っても眠らないと決めていたし、実際、なかなか眠れなかった。
ところが、夜中を回る頃になると、途端にすとんと意識が落ちてしまうのだった。

「あれ、絶対に父さんが何か仕掛けてたよな、催眠術とか」
「有り得る」

そんなところだけは、無駄に大悪魔の力を発揮するのがスパーダという人物だ。
子どもたちが寝静まったのを確認して、こっそりと枕元へプレゼントを置いていく父。
廊下で微笑みながら見守る母。
無事に“ミッション”を終えて、二人で顔を見合わせて笑いあう。

そんな光景が目に浮かんだ。
そういう両親だった。



「ん…?」

事務所のネオンがついていることに気付いて、二人は足を止めた。
おまけに――。
「おいおいおい…」
「えらいことになってるな…」
文字にモールや鈴、リース、挙句の果てにはダンテのシルエットにサンタクロースの帽子まで。
ご難続きの扉の前には、白銀のツリーが鎮座ましましている。
近づくに連れて、賑やかな会話が聞こえてくる。
扉が開き、見慣れた金髪がひょいと顔を出した。
「あーら、遅かったのね。もう始まってるわよ!」
きっと酒が入っているに違いない、ワインのボトル一本分くらいは。

ダンテは、笑いをこらえながら兄を見る。
「どうする?」
バージルは、にやりと笑って弟を見返す。
「帰るしかあるまい?」
ねぎらうように互いの手を打ち合わせると、双子は歩いていく。
騒々しくも明るい、帰るべき我が家へと。









2008/12/24-25


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