依頼の場所に足を踏み入れた時、バージルは既視感を覚えた。 白い壁に囲まれた長い長い廊下。 はめ殺しのように設置された扉。 振り向いた先には、天井までガラス張りの吹き抜け。 格子状の窓枠を、夜の闇と星とうっすら欠けた月が絵画のように覆っている。 だが、既視感に足を止めたのは数瞬。 身にまとう魔力を研ぎ澄まし、バージルは歩みを進める。 あの夢は、“見た”のではなく“見せられた”のだ。 そうであれば、夢を“見せた”相手は、最初からバージルもしくはダンテがここに来ると知っている。 そして、そんなやり方を用いるからには、知能を備えた高位の悪魔であるはずなのだから。 それが挑発なのか、罠の伏線なのかは判らないが、いずれにせよ、相手が挑んできているのを見過ごしにするバージルではない。 ガラス張りのエレベーターに乗り、依頼場所に指定されていた階を押す。 30Fのボタンが点灯し、青い影を収めた透明の箱が上昇を開始した。 World Start at Dawn |