その笑顔は、私だけのものだと思っていた。 繊やかな絹房の髪を撫でることができるのは 白玉の指を絡めることができるのは 焚き染められた薫香と体温を感じながら抱きしめられるのは 全て、私一人だと思っていたのに。 どうして、私を裏切った……? あなたが、そのかんばせをほころばせるのは、彼のため。 その唇が紡ぐのは彼のための言葉 その瞳が愛するのは彼の姿 その腕が抱きしめるのは――――。 私はあなたを許さない。 あなたから全て奪ってやる。 愛するもの、欲するもの 全て奪いつくして。 そうして、あなたに服従するのは私だ。 心の全てに私を刻み付けて 私を求める以外の言葉を語れぬよう。 私以外の誰も、目に映さぬよう。 私だけにその腕を縋り付かせて そうして、私はその腕を拒んでやる。 それができればどんなにいいか。 でも、現実にひれ伏すのは私。 私だけが、あなたを心から愛している。 私をこんなにも魅きつけておいて 私をこんなにも虜にしておいて 私を悲しませるあなたが 全て、いけないのですよ。 「ねえ、子上様…?」 |