書架

□大辟
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その笑顔は、私だけのものだと思っていた。

繊やかな絹房の髪を撫でることができるのは
白玉の指を絡めることができるのは
焚き染められた薫香と体温を感じながら抱きしめられるのは


全て、私一人だと思っていたのに。


どうして、私を裏切った……?


あなたが、そのかんばせをほころばせるのは、彼のため。
その唇が紡ぐのは彼のための言葉
その瞳が愛するのは彼の姿
その腕が抱きしめるのは――――。


私はあなたを許さない。

あなたから全て奪ってやる。
愛するもの、欲するもの
全て奪いつくして。

そうして、あなたに服従するのは私だ。

心の全てに私を刻み付けて
私を求める以外の言葉を語れぬよう。
私以外の誰も、目に映さぬよう。
私だけにその腕を縋り付かせて
そうして、私はその腕を拒んでやる。

それができればどんなにいいか。
でも、現実にひれ伏すのは私。

私だけが、あなたを心から愛している。

私をこんなにも魅きつけておいて

私をこんなにも虜にしておいて

私を悲しませるあなたが

全て、いけないのですよ。

「ねえ、子上様…?」



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