白い指が、ぱちり、と象嵌の入った石を弾く。 狙いはいい。 盤の端のほうに並ぶ得点の高い石。 二つ同時に落とし、逆転するつもりだろう。 (だが、親石の位置がよくない) 案の定、親石は二つ目の石をかすめたが、落とせぬまま落下した。 「私の勝ち」 静かに告げると、落ちた棋を広い、盤へ戻す。 その石を恨めしそうに一瞥した君主と目が合う。 「あと少しだった…」 若いが妙に大人びているこの青年も、こと勝負ごとには人並みに気が高ぶるらしい。 「貴方は賢い。だが、結果に焦るあまり戦略を欠く。ゆえに負けるのです」 そう説明してやれば、澄んだ双眸がきらりと光る。 「もう一度だ」 --------- 遊戯だからこそ、再戦できる。 |