書架

□頽花
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「そなた、死者に仕えることができるか?」

昼には珍しく、寝殿に戻っていた主が、司馬師へ開口一声、そんなことを尋ねてきた。
「死者の遺命に仕えるということでございますか」
長い黒髪の一房へ愛しく口づけると、微かに梔子が香った。
「考えたくはございません」
「律儀だな、私でなくとも――例えばの話だ」
ひそやかに笑う、陰影を帯びた美しさの不吉が司馬師の目を捉える。
昨夜の父とのやりとりが、不意に司馬師の脳裏に蘇った。そこにあるのは黒々とした不快感だけだ。
「わたくしは、仕えることができぬでしょう」








































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