きらびやかな衣裳や宝石を眺めるたび、あの隠微なる遊戯が思い出され、胸がざわめいた。 幼い曹叡の手に愛おしそうに口づけ、白く長い指で紅を差し、髪の一筋まで恭しく梳っていた。 美しい微笑みや、しのびやかな笑声――そこに混じって、少年の細い首筋や肩口や額を切なげに貪っていた、生々しい感触が蘇る。 幼い日の甘美な記憶が、実はもっと苦く甘い戯れだったのだと気づく。 それは毒々しいほど鮮やかなようで、朝靄のように穏やかで白々としてもいる。 幾重にも襲ねられた、幽艶にして歪んだ秘儀。 彼が、叶わぬ面影を自分の上に映じていたのは解る。 だからといって、彼が曹叡を欲しているわけではないのに。 それを、今、求めようとしているのは、なぜだろう。 「そんなの、知っている……」 父の似姿であっても構わない。 母の依代であっても構わない。 誰かに求めてほしいからだ。 「ねえ、叔父上……子建様……」 あの時より面やつれした叔父は、その故に尚いっそう、美しい。 「秘密を守って下さいますか」 深淵のような黒い瞳に満ちる、言い知れぬ恍惚の潤みを、曹植は心から美しいと思った。 「守りますよ、元仲さん」 やはり、微笑んだその人に魅了されていたのだ――曹叡は、そう悟った。 「きれいな眼だ…」 うっとりと目を細め、彼は呟いた。 「兄さんの眼…」 物狂おしそうに頬を撫でられて、曹叡は少し、切ない。 「元仲さんが、うらやましい」 「なぜ、ですか…?」 「兄さんと嫂様の、両方を持っているから」 耳元で囁かれる声は、まるで媚態を秘めた毒薬のようだ。 曹叡の心を浸食していく。 純粋にすぎて歪んでしまった欲望に、応えてやりたいと思わせる。 「叔父上」 「なに…?」 薄い、梔子の花びらのような唇が、頬に触れる。その形は笑っていた。 「私に、下さいますか」 何を、とは言わない。 彼も、聞かない。 「いいよ」 彼の白く長い指が、自分の玻璃を嵌めた帯鉤を外すのが見えた。 「元仲さんが、私に下さるなら…ね…」 実のところ、曹植の何が欲しいのか、曹叡自身よく解らない。 唯だ、くすりと微笑む唇がひどく魅力的だった。 唇の形を舌先でなぞるような、十五にしては頽廃した口づけを選んだのは、そういうことなのだろうか。 帯が外れて、寛いだ裾から白い脚が零れた。 小さな指を優しく噛みながら、柔らかな口づけが膝を這い上っていく。 「ん…っ…」 ぬるりと生温かい感触に、知らず体が震えた。 羞恥というより快感、それを期待する歓び。 心の底がぞくりと蠢く。 自分はどうなってしまうのだろう、と。 (……違う) どうにかなってしまいたいのだ。 |