短編

□小話
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ルイス=キャロル独白
捏造万歳












筆を進めれば、その世界は構築されていく
筆を止めれば、その世界は終わりを失う

筆を止める気などない
ただ、この世界をあの屑籠の中に入れてしまったらどうなるのだろうというどうしようもない馬鹿な考えが頭を過っただけだ
無論、そんな事をするつもりは毛頭ない

あぁ、早く続きを書かなくては
この世界にはあの耳の生えた不可解生命体を始めとする、彼女が愛した世界の住民達が完成された世界を待ち望んでいるのだ

そして、あの屑籠の中で名の無い哀れな弟が拾い上げられるのを待っているのだ
今度こそ、愛してやろう
今度こそ、幸せにしてやろう
彼は幸せになる為に生まれてくるのだ

一人の聡明な兄と、一人の好奇心旺盛な姉と、生意気な飼い猫と、優しい母
そして姉と仲の良い作家の男に温かくその生を祝福されるのだ
それから、誰のものでもない、自分だけの名前を母親から授かり皆に愛され生きていく…

あぁ、早く続きを書き上げなければ
屑籠の中に一人取り残していればあの子供はいざ拾い上げたときに何を言い出すかわからない
それこそあの頃のような頭の悪い会話を交わす事になるだろう
あぁ、早く続きを書き上げなくては

私の、一番生意気で、一番口の悪くて、一番幸せにしてやりたい子供が、待っているのだから

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