短編

□意地を張って苦しむくらいなら全て吐き出してしまえ
1ページ/1ページ







『ずっと一緒にいられたらいいのに』


聞かない方が良かった
それは、弟の切実な願いだった
分かっていた、なのに


「全く、俺は何をしているんだ」


あんなの、ダンテを傷付けるだけじゃないか

『永遠など、夢見がちな人間の妄言に過ぎない』

あの時のダンテの酷くショックを受けた表情
哀しみに揺れる瞳


(彼奴は、ずっと独りだった。だから尚更人の温もりを求めるだろうというのに)


何故俺は彼奴の哀しみを拭ってやれない

無理に求めれば身をも滅ぼす
そんなもの求めずとも、俺はずっと共にある
永遠なんて言葉よりも永く、お前の傍にいる

本当はそう言ってやりたかった
何故、口に出せない
何故、言ってやらない
何故、そこまで思っていながら安心させてやらない
あぁ、答えは簡単だ
壊れてしまいそうだから
口にした瞬間、全てが嘘へと成り果ててしまいそうだから


「…ッ」


今ごろ部屋で泣いているであろう弟を想う




意地を張って苦しむくらいなら全て吐き出してしまえ





.

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ