キリ番

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「恋のいいところは、階段を上る足音だけであの人だって分かることだわ」
なんて名言を残したのは誰だっただろうか


だけど、自分のこれは恋ではない。
絶対違う。
それだけは言い切れる。










ガンガンガンガンガン!! と、すごい勢いで階段を駆け上がる足音が二日酔いの頭に響く。
ああ、あいつか。と足音だけで理解してしまう自分が凄く嫌だ。
でも、これは絶対に恋ではない。
だって平成のこのご時世。下駄で階段を駆け上がる人間なんて限られている。




「オーサムちゃーん!」
「…千歳…やかましいわ」
「今日は天気もいいし、よか花見日和たい」
知ったことか。頭が痛いんだから今日は寝かせてくれ。

布団から頭を出すと、大きな重箱を抱えてにっこりと笑う千歳と目があった。
「弁当、作ってきたばい」
「あー…」
「花見、行かん?」
「…うん。来週な」
「来週には花なんかなくなるとよ」

掛け布団を取り上げられ、顔を覗きこまれた。
「ね」
「…あー…」
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