キリ番

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「…口んなか生臭い…」
「先輩、大丈夫っすかー?」
「だいじょばない…」



青学乾特製岩清水……もとい鰯水。
爽やかな名前に騙された男がココにも一人。

四天宝寺を次へと進める為。
周りからの無言のプレッシャーに押され、ええいままよとギトギトと七色に光る水を一気に飲み干した謙也は少し離れた場所で死体になっていた。
「…先輩…飴とか食います?口直し」
「いや…飴はええわ…」

身体を張った功労者の謙也を労うように背中を摩る財前の言葉にも、ただただ力なく首を振るだけ。
数々の選手達を葬った恐怖のドリンクは、浪速のスピードスターも例外ではなかったらしい。

「おーい大食い不参加者〜。次のドリンクの『コーラ』と『コーヒー』。ここに置いとくから順番が来たら運んでねー?」
「へーい。乾さんご苦労さんっす」
「…コーラ言うた?」
「コーラ。って言いましたよ。乾さん」
謙也が顔を上げた目線の先には、机に置かれたシュワシュワと泡を出している乾作の黒っぽい液体。
「コーラって、あのコーラ?」
「さあ…?」
生臭い味の残る口に炭酸飲料の誘惑は逆らい難い。
グラスに注がれた液体を見つめる目は期待に満ちている。

「俺も飲んでええかな?」
「沢山あるみたいやけど…乾さんのドリンクですよ?」
ただのコーラやないと思うんですが… そう呟いた財前の言葉はあまり届いていないようだ。
「んなら、コーラいただきます」
「…俺は一応は止めましたよ」
透明のグラスに口を着け、一口二口と喉に流し込む謙也の様子に財前は首を傾げる。
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