小説3

□恋色花火
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オレの好きなひとは、とてもやさしいひとです。


「なーつだねぇ…」
「……」
「あっついねぇー…最近猛暑続きだよなあ」
「……」
「うんうん、ほんと水浴びでもしたいくらい!」


となりにいるだけで笑顔になれる、不思議なひとです。


「そういえばさあ、今度の日曜日夏祭りあるよな!練習終わったあと行こうぜ!」
「…!」
「うん決まり!」


夏は練習がやたらきつく感じるので正直苦手です。
でも夏はそれ以上に楽しいことがたくさんあるので、やっぱり大好きです。

それから、夏は、


「思い出すねー……」
「…?」
「んー?内緒!」


オレにとって夏は、『とくべつ』なのです。
絶対忘れないだろう、高1の夏の前。何回目か忘れたけれど、一緒に見たあの花火は、今でも鮮やかに思い出されます。


『すきだよ』


って。
近いはずなのに遠くに聞こえた打ち上げ花火の音。
本当に言ったのかはわからないけれど、聞こえた気がした水戸部の言葉。


「今年はさ、せっかくだから浴衣着ようぜ!水戸部似合うもんな〜!」
「…っ!」
「夏しか着れないしっ!」


照れる水戸部に満面の笑みを向けて。
夏はオレらのもの。


オレの好きなひとは、とてもやさしいひとです。
夏の空みたいな、おおきなひとです。
『すき』って言いたくなる、不思議なひとです。



恋色花火

(今年も来年その先も、一緒に見に行こうね)






END





◇◇◇



水金企画「恋するマーキュリー」さまへ提出させて頂きます。
主催の四葉さま、多大なご迷惑をおかけして申し訳ありません…!
お題に沿えたかどうか…微妙ですが……今年も参加させて頂けて嬉しいです!!
水金よもっと広がれー!!大好きー!!!(*´▽`*)


110804/風華香夜






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