小説

□Sweet Sweet
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応接室に甘い香りが漂う。


「いっだだきまーす!」


ソファーに二人は並んで座る。
というかディーノが雲雀の隣に座った。


「何でわざわざ隣に座るの?」

「ふぁ?ふぁってきょーやのふぉなりがいーもん」


むぐむぐとケーキを食べるディーノの発した言葉は、雲雀にはわからない。


「日本語話せ」


そう言って、自分もケーキを口に運ぶ。
ケーキの定番、イチゴショート。
生クリームの甘さと苺の酸味が上手く調和して、何とも言えない。

さすが並盛スイーツ。

そんなことを思っていると、既にひとつケーキを食べ終えたディーノが口を開く。


「『オレは恭弥の隣がいいもん』って言ったの」

「そう」


適当に相槌を打って、雲雀はケーキを食べる。


「…恭弥さぁ」

「うん」

「オレのこと嫌い?」


ディーノが急に真面目な声を出したから、雲雀はなんだと思って顔を上げた。


「なんで」

「んー……ごめん、なんとなく」


でも、思っちゃった。
そう言って、ディーノは淋しげに笑った。


…この金髪は、本当の馬鹿だ。
本当に本当に、大馬鹿だ。


そんなに真面目な声で話されたって
そんなに淋しげな瞳で見つめたって














……口の周りがクリームだらけでは全く格好よくない。


「…わからないな」

「ん?」

「こういうのを物好きって言うんだろうね」


あぁ、本当に。
自分でもわかる。



こんな格好悪い貴方を
こんなにも愛しいと思うなんて



「…恭弥…?」


雲雀は、ディーノの袖を引っ張った。


「え」


そして、口の横のクリームを舐め取った。


「僕は興味の無い奴には付き合わないよ」


フッと小さく雲雀は笑うと、何事もなかったようにまたケーキを口に運ぶ。


一方のディーノは、嬉しいやら戸惑うやらで……


「ちょっと…恭弥狡いだろ…」


熱を持つ顔を片手で覆う。


とんだ厄介者に惚れたもんだ。


ディーノはそう心の中で呟いて、さっきのお返しと言わんばかりに雲雀に甘い甘いキスをした。



「…恭弥…すき」

「……ん」



甘い甘い空間には

久々の二人きりの時間を



甘い甘い香りは

小さな不安を包み込んで







Sweet Sweet

(たまには、甘すぎたっていいんじゃない?)








END
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