小説3

□影に添う
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本日(アップ日)は香夜さんのお誕生日という事で勝手に小説を捧げさせて頂きます!←
香夜さん、お誕生日おめでとうございます^^
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学校のチャイムと共に面倒くさい5限目の授業が始まった。
昼飯も食ったばかりで腹は満腹。
窓から比較的やわらかい光がカーテン越しに入ってきて、少し開いた窓の隙間からは風もほどよく吹いていて眠気を誘う。
おまけに5限の授業は古文で、黒板には意味不明の漢字やらよくわからない日本語らしき文が教師の手によって書かれていて頭がすでに考えることを放棄しだした。
ぶっちゃけ今すぐにでも顔を伏せて寝たい。
しかし、この教師の前では寝るのは自殺行為なのは既に実証済みで、無理だと解っていても押さえられない欠伸を思いっきりして視線を黒板へと戻すと、いやな笑みを浮かべている古文の教師とばっちり目が合って頭の中で警報が鳴った。

「眠そうだな火神」
「ぅ…」
「眠気覚ましにこの前やった栄花物語の文中に出てくる『影と添う』の意味を言ってみろ」
「ちっ…。はい」

古文の教師の野郎、春終わりに俺が顔面掴んだのをまだ根に持っているらしく、俺が眠そうにしていたり目があったりすると容赦なく俺を指名してきやがる。
俺はイライラしながら立ち上がり、一応机の上に出しておいたノートを開いて教師が言った言葉をノートから探し出す。
ノートには俺の雑な字の合間合間に、黒子の少し筆圧の薄い丁寧な文字が混ざっている。
これは、俺の古文の授業の異常な指名率の高さに同情した黒子が宿題を教えるついでにヒントを書いていてくれたものだ。
正直、根本的に漢字どころか日本語すらきちんと理解出来ていない俺とっては、このノートあちらこちらに散らばっているそのヒントは救世主的な存在で、このヒントの中から探し出して答えるほか教師の質問から逃れる道はない。
手に持ったノートに目を走らせながらパラパラと捲っていくと、すると教員が言った単語が見えた気がしてそのページで手を止めて、書かれている言葉を確認してからその横に書かれている文字を見て思わず笑いそうになった。
そこには黒子の筆圧の弱い綺麗な字ではなく、俺の辛うじて読み取れるぐらいの殴り書きが一言添えてあるだけだったのだが、ある意味でもっとも説明しやすい説明を自分で書きこんでいた。


◇◆◇◆◇


チャイムがなって古文の授業が終わり、多少硬くなってしまっている肩の筋肉をほぐす為に伸びをすると、前に座っている火神君も僕と同じように伸びをした。
僕が伸びをしても後ろに誰もいないからいいが、火神君が伸びをすれば当然のように僕の目の前に彼の頭や腕が伸びてきて危ない。
いつもの事だが、僕はその伸びてきた手を避けながら火神君の頭だけを捕まえて注意をする。

「火神君危ないです」
「う…。別にいつものことだろ」
「なら学習して下さい。危ないです」
「わかった。悪かった」
「解ってもらえて良かったです」

僕の注意に謝った火神君の頭を開放して、短い休み時間に僅かな雑談を楽しむ。
話をするためにこちらを向いてくれた火神君の肘の下に敷かれている古文のノートを見て、さっきの授業で疑問に思ったことを思いだして火神君に質問する。

「そう言えば火神君、さっきはよく古文の問題答えられましたね。確かあの部分は、簡単に説明だけしかしていなかった気がしたんですが」
「ああ、アレはたまたま俺がメモってたんだよ」
「メモ…ですか…?」
「おう」

僕の疑問に、火神君は自分の肘に敷いていたノートを取り出して僕に例の言葉が書かれているページを見せてくれる。
すると、そこには『影と添う←黒子のこと』と書かれていて目を見開いた。
先ほどの授業で火神君は「自分の影みてーにずっと傍にいる事だろ、です」と答えていた。
つまりそれは文面からして火神君からした僕のことを言っていると言うことで…。
驚きのせいで多少回転が悪くなった頭で考え至ったところで、首から上が一気に熱くなって羞恥と共に幸福感が胸一杯に広がる。
きっと火神君自身はとくに考えずにこの文章を書いたのだろう。
けれど、この言葉の意味としては僕は火神君の本当の影の様にずっと傍に居られるという意味にもとれる。
僕の反応の意味がイマイチ理解出来てないで僕の赤くなった顔を少し心配そうに見ているバカガミ君を見ながら、小さく口の中で笑って彼を安心させるために顔を赤くしている最もらしい言い訳を伝えて、そっと悪戯の様に先ほどの文字の下に『影の形に随うが如し←僕たちの事です』と書き加えてキミにノートを返す。

「? 黒子、これどういう意味だ?」
「考えてみてください」
「はぁ?」
「さっきの言葉と同じように考えて答えてみて下さい」
「あー…、俺達って事な訳だろ…。んじゃ、離れねーでずっと一緒、みたいな意味でいいのか?」
「!……大正解です火神君」

冗談半分、解らないだろう半分で書いた言葉を見事に当てられてしまって驚いた。
火神君の野生の感に本当に凄いと思いながら、悔し紛れと動揺を隠すためにご褒美と言って彼の服を引っ張ってキスを送った。
だって、僕ばかり振り回されるなんて悔しいじゃないですか。


影と添う
(っ!くろ…!)
(悪いのは火神君です)

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またしても古典ネタで申し訳ありません(苦笑)
このようなモノですがよろしければ貰ってやって下さい香夜さんm(_ _)m
香夜さん、お誕生日おめでとうございます!

解説
栄花物語:平安時代の古典で、編年体になっている物語風の史書。女手だと言われているが作者は不明。藤原道長の話によく典拠されている。
影と添う:形と影の様に離れずに付き添う事
影の形に随うが如し:二つのモノが常に離れない事の喩え



◇◇◇


維音さんより誕生日プレゼントに頂いてしまいました\(^O^)/
古典ネタ大好きなのでうぉぉぉぉ!!と滾りました(笑)
古文での「影」の意味を皆様是非調べてみてください。火黒好きならテンション上がります!!(笑)
しかしかがみんの野生の勘はやっぱり侮れないですね…!
要するに大好きです!!^ρ^

維音さん、素敵な萌えをありがとうございましたあああ\(^p^)/





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