読み物の街
□小さき者の願い
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───ある小さい女の子の物語です───
「錐!!きりーっ!?止まってよー」
どうみても…小学生くらいの女の子が、はるか前を歩く学生服を着た男の子を走りながら呼んでいる。
そして、その声は彼に聞こえてない…。
「ねっ!!待って、錐ってばぁ!!」
「……ん…?柚弥(ゆや)か?」
やっと気付いた。柚弥はそう心の中でつぶやいた。(もちろん、呆れている。) だけど、錐は優しい。ちゃんとその場で、止まってくれている。
「おはよう…柚弥。ごめん、朝から走らせて。」
「い、いいの;大丈夫だからっ心配しないで」
そんな何気ない言葉を交わす日常が柚弥は…好きだった。
「あのね、錐…昨日また、女の子に告白されていたよね…?何で振ったの?あんなに可愛いコだったのに…」
錐は、無口だけど、容姿端麗(?)で…勉強もちゃんと出来るから、モテモテです。
「だって俺は…あ、いや…俺は好きな奴がいるから…。」
「あっ…そうだったね!ごめんね何度も聞いちゃって…」何故か、私の胸がチクリとした。
学校(もちろん中学校)についても、教室に入ってもお互い、無口だった。
「あらっ?錐くん♪朝から会えるなんて…光栄だわおはよう!」
「あ、彩乃サン…おはよう。今日も元気だね。(汗)」
「もちろん!錐くんに会えたから…元気なの(照)……んっ?あらあら、柚弥。いたのね?おはよう。」
「あ、おはよう。霧前(きりさき)さん…」
なんだか、霧前さんと錐…いい感じだなぁって思っていたら二人は、私の目の前でコソコソとこんな会話をした。
「ところで錐くん、例の話…返事、今するけど、いい?」
「あ、あぁ…」
「私と付き合いたいなら…柚弥と一緒にいないで。」
「えっ?」
思わず、柚弥は声に出してしまった。
「何…今、なんて言ったの…?ねぇ!錐っ…」