08/05の日記

23:21
2week/7※管理人が立場やシステムをよくわかっていませんので、色々と目を瞑って下さると幸いです
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幕府の尖兵となる真選組と、将軍に仕える旗本は会合を行う機会が多い。
将軍の護衛だ、軍資金の調達だ、組織の管轄区域の懸案だと、問題は日々様々に生まれる。
今回は警察庁長官であるとっつぁんの随行に過ぎないが、居心地の悪さに辟易としていた。

「そういえば真選組は女人禁制だったね。男所帯となれば衆道が主流なのではないかね」
「…色恋沙汰や恋愛観など、個人の自由ではありますが、男所帯と言えどあまり聞いた覚えはありませんよ」
「女と言う生き物は何とも愛らしくはあるが、扱いが難しい。やれセクハラだパワハラだの、神経が磨り減る思いだ」

何が可笑しいのか、ハッハッハッと領主が豪快に笑う。
接待役の舞妓が、盃にそっと日本酒を注ぐが、その背後に回った男の手は彼女の臀部に添えられている。
表情一つ変えない舞妓は、内心でどう感じているのか。
少なくともいい気はしていないだろう。
そんな逃げ道のない彼女に救済の手を差し出すべく、俺は空になった盃を軽く持ち上げるジェスチャーをとる。
すると舞妓は「失礼します」と領主に頭を下げて、俺の元に酒を注ぎに来た。
正直、酒はあまり強くはない。
椀にたゆたう日本酒に、俺は理性を留めながら口をつける。

そこで、彼女を取られて鼻白んだ領主が、重い腰を上げて俺の隣にどっかりと座り込んだ。
今回、団体客として座敷を借りているが、俺や近藤さんを含めても十五人程の人数がいる。
今は酒の席ともあり、少々はめを外すものがいても誰も気にとめない。
つい先日のことだ。
俺と近藤さんは、この男と会合の席を共にした。
俺は、この男には不快感を抱いている。
それは記憶に新しい、男の不品行。

領主は俺の横を陣取るなり、馴れ馴れしく肩を組んで耳元で囁いてきた。

「その点男は便利で良い。女のように訴えるだの何だの騒がないからねェ」

耳打ちをしながら、端座の姿勢を保つ俺の太股を撫でる。
不愉快だ。
数日前もこの男に絡まれたばかりなのだ。
だが、自分の身の上は弁えている。
下手に騒いで真選組やとっつぁんの立場を悪くするぐらいならば、受忍の選択を選ぶのが適宜だろう。
男の手が次第に太股から上に上がっていく。



『君はそれが本当に適切な判断だと思っているのか?』

『甘受して辛抱して何になる?――真選組は…彼等は望んでいない』



ぶわり、と背中から風が吹き荒んだように、記憶の中の声が駆け巡る。

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