小説置場

□別れの約束
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 「曹長」

木の傍で座ってハヤテ号を撫でているフュリーを見つけた。
「!…ファルマン准尉!…どうしてここに…」
ファルマンに声をかけられ慌てて立ち上がりながら言った。
「てっきりもう行ってしまったのかと思ってました。」
「いや、大佐から借りていたチェスを返し忘れててな…」
ファルマンは苦笑いでも柔らかい表情を浮かべた。

「…曹長はまだ行かないのか?」
「………」
フュリーは俯いて黙った。
「…曹長」
「准尉…」
フュリーが下を見ながら話し始めた。

「准尉は北方司令部ですよね」
「ああ」

「ブレダ少尉は西方司令部ですよね」
「ああ」

「中尉は大総統付き補佐」
「ああ」

「大佐は中央司令部」
「ああ」

「ハボック少尉は…退役」
「ああ」

「僕は…南方司令部」
「…ああ」
ファルマンはフュリーの言いたいことをよく分かっていた。
だからこそ黙って聞いていた。

「皆バラバラになってしまいましたね…」
「…ああ」

「僕の行く南方司令部はひどい交戦中だそうです」
「…ああ…」

「…どうしてこんなことになってしまったんでしょうか」
フュリーの声は段々小さくなって震えていた。

「…我々大佐組は周りから相当嫌われているからな」
ファルマンは自嘲気味に言った。
「僕らはこの国を変えていきたいだけなのに…」
フュリーは手を強く握った。

「…曹長…悪いなそろそろ行かなくては…」
ファルマンは苦々しい表情で言った。

「あ、…そうですね…僕ももう行かないと…」
顔を上げたフュリーは今にも泣きそうな顔で頷いた。


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