スモエー部屋2
□おやすみ。
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隣で眠る黒髪に手を伸ばす。
少しうねっている毛先まで指を通すと、瞼が小さく動いた気がした。
そばかすが散った頬、薄い唇。深く眠りにつく顔をそっと手の甲でなぞった。
白ひげ海賊団、二番隊隊長。
四皇の一角を担う、実質世界最強の海賊団の一員。
いつから逢瀬を重ねるようになったのか。
最初は単なる押し掛けでしか無かったが、いつしかオレには窓のカギを開けたまま眠る癖がついていた。
気付くといつの間にか隣に潜り込み、スヤスヤと眠っている二十歳の素顔。
どんな物音でも起きるオレが、お前が入ってくる音にだけは気付かない。
これがどれだけの事なのかお前にはわからないかもしれない。
未だ眠り続ける頬に、唇を落とした。
若い身空で得たその居場所。
物ともせずに誇る背中。
それがどれだけの重さを持っているか、オレにはわからない。
きっと一生、わからない。
でも、これだけは思う。
どんな事があっても、どんな夜を越えても。
お前の目覚める朝がいつも幸せであるように。
いつも幸せであるように。
ただそれだけを。
少ししかめた眉。
僅かに開いたカーテンを引き、漏れる朝日を閉め出した。
おやすみ。
目が覚めたら、背中の誇りに生きればいい。
だから今だけは、ただの二十歳で。
END