スモエー部屋2
□年に一度、逢瀬の夜
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見上げれば、夜空を渡る星の河。
グランドラインも半ばに差し掛かった船上でひとり葉巻をくゆらせる。
(7月7日、か…。)
夏島気候の熱帯夜。
頭上に渡る星屑の海原の中でも目立つ2つの星が、煌々と輝きを放っている。
薄く流れる天の川を挟む様に位置するベガとアルタイル。
(…どこかで見たような光景だな。)
自身の環境と照らし合わせ、ため息をついた。
天の川が“埋められない溝”だとすると、ベガとアルタイルは―――――
そこまで考えた時、いきなり温かい何かが視界を覆い目の前が真っ暗になった。
「だーれだ。」
聞き慣れた声が耳元で優しく響いたのを聞いて、くわえていた葉巻をゆっくりと2本とも消した。
(まさかやって来るとはな…。)
もしかしたら逢えるかもしれないと密かに思っていたが、本当に現れるとは。
「…ベガのお出ましか。」
少し緩みそうになる口元を抑えながらそう言った途端、今まで目を覆っていた手の平がパッと離れた。
…かと思いきや、今度は頭にドスンと何か衝撃が落ちた。
「!?ι」
何事だと思い振り返るといつもの様に笑顔で立っているはずの男―ポートガス・D・エース―が、怒りに満ち溢れた表情で今しがたオレの頭を殴ったんだろう手刀を構えたままこっちを睨み付けていた。
「な…なんだ…ι」
「Σベガって誰だ!!!浮気者!!」
いきなり物凄い剣幕で怒鳴り始めるエースに、思わず口が開いた。
「…あァ?ι」
「Σうそつき!!オレの事愛してるって言ったじゃんか!!一生離さないって言ったじゃんか!!もうお前じゃねえと勃たないって
「Σちょっと待て!!!ι」
とんでもない事をピーピー騒ぎたてるエースの口を慌てて押さえ、イヤイヤと暴れる身体を何とか甲板に押さえつけた。
「Σム――――!!!」
きっと思い付く限りの罵詈雑言を叫びまくっているんだろう、未だこちらを睨み付けながらウーやらアーやら言っている瞳を見つめ諭すように話しかける。
「頼むから静かにしろι」
ココは海軍船でしかも今は夜中だからみんなが起きるだろうと言うと、少し落ち着いたのか静かになった。
「…手を外すが、怒鳴るんじゃないぞ。」
半分据わったままの目付きはさておき、コクンと頷いたのを確認し口元を覆っていた手をゆっくりと外す。
「…ベガって、誰だよ。」
手を外すと同時にこぼれ出した台詞は、睨み付ける瞳と同じでかなりの不機嫌さが窺えた。
きっとベガの事を浮気相手か何かだと勘違いしてるんだろう。あまりにも無知な事に可笑しくなり、クックッと笑った。
「…何が可笑しいんだよ。」
「いや、お前があんまり可愛いんでな。」
そう言った途端、目の前の顔がサッと赤くなった。
「お…お世辞言えば許して貰えるなんて思ってたら、大間違いだからな。」
甲板に横たわったままプイッと顔を反らすエース。
「なんでオレがお前にお世辞なんぞ言わにゃならん。」
「…浮気したからじゃねーの。」
少し赤い耳とは正反対の冷たい目線をこっちに寄越しながら吐かれた言葉に、もう一度笑った。
「するか、バカ。」
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