スモエー部屋2

□想
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「…あーあ。」


誰もいない部屋。
広いベッドの上にごろんと転がり、ヤニで黄色く濁った天井を見上げた。


「つまんねーの…。」


ため息まじり、木目に向かってひとり呟き瞳を閉じる。


今オレがいるのは海軍船。しかもあのオレ様っぷりで有名な“海軍本部准将・白猟のスモーカー”の船だ。

気ままな散歩中、腹が減ったから上陸しようと寄った島でたまたま見かけたこの船。

まさかこんなところで会えると思ってなかったからウキウキしながら早速部屋に潜りこんだのに、もぬけの殻だなんて。

ひと騒ぎ起こせば帰って来るかと船内を回ってみたが、人っ子ひとりいない。


(見張りくらいつけろよι)


海賊に乗っ取られたらどうすんだとプンスカ怒ってみたが、自分がまさに海賊だったのを思い出してそうだったと頭を掻いた。


(どこ行ったんだろーな…。)


どうせ島に懸賞金付きの海賊でも出て、急に呼ばれたんだろう。



あのおっさんとはなんと言うか…ハッキリ言えば、“恋仲”だ。

最初に会ったのはアラバスタ。

良く良く聞いたらルフィを追ってこの“偉大なる航路”に出て来たんだと言うし、まー面倒くせえから説明しねえが色々あって仲良くなった。

そんで仲良くなったついでにどこをどう間違ったのか恋仲にもなったんだが、立場が立場だし性格が性格なもんだから会えたらラッキーくらいの感じでお互い好き勝手に生きている。


(でもなあ…。)


パチリと瞳を開け、じっと見つめる木目に向かって呟いてみる。


「…会えなきゃアンラッキーだろ。」


瞬きしないそれを、負けじとグッと睨んでみた。





「誰がアンラッキーなんだ。」


突然カットインした声に驚いて振り向くと、開けっ放しになったドアにこの部屋の主が寄りかかっていた。


「どこのコソ泥かと思ったら…。」

「Σおっそーーい!!オレだいぶ待ったぞ!」

「Σ遅いじゃねえ!何を考えてんだお前は!!」


帰って来たら食料がごっそり減っていると大騒ぎになっているからまさかと思ったらやっぱりお前かと怒りまくる言葉を遮り、こっちだって待ちくたびれたんだと負けじと起き上がった。


「だから、まあ、痛み分けだ!」

「Σなんだそれは!まったく…本当にお前は…ι」


頭痛がするとばかりに額を抑える懐かしい姿を見て、ニシシと笑った。


「まあまあ…あんま怒るとハゲるぜオッサン。」

「Σ誰のせいだ!!ι」


そう言うとスモーカーは大きなため息をひとつ吐き、パタンとドアを閉めた。



「…しかしなんでこの島にいるんだ。」


お前の目撃情報は聞かなかったぞと言いながら隣に腰掛けるスモーカー。


「散歩がてら。…あー、島にはまだ上陸してねぇから誰にも見られてねぇだろーな。」

「…ここにずっといたのか。」

「うん!」


満面の笑みで返事をすると、スモーカーはまたぐったりと力無く頭を垂れた。


「つーか、見張りもいねぇしさー。危ねえよ!」


海賊に乗っ取られたらどうすんだよと真顔で説教をすると、ああ悪かったオレの責任だと未だ頭を垂れたまま答えるスモーカー。


「ま、次からは気をつける様に。」


落ち込む背中をポンポンと叩くと、お前に言われたくねぇとばかりにギンと鋭い瞳で睨まれた。


「あァ?」

「いや…なんでもありませんι」


それだけで人を殺しそうな眼力におー怖いと慌てて目を逸らす。

このオッサンは短気だから、下手に怒らせたらすぐにつまみ出される。
せっかく久しぶりに逢えたんだから怒らせるワケには行かないと分かっていたのに、腹が減っていたもんだからついつい食べてしまった。


(…今日も追い出されんのかなι)


久しぶりに逢えたのにこんな所で帰されるワケには行かない。しかしつまみ出される可能性メーターはすでに振り切っている気がする。


(どうしよっかなぁ…。)


木目を見つめどうやって丸め込もうかと密かに考えていたら、隣から低い声が響いた。



「…しかし、久しぶりだな。」



さっきまでとは違う柔らかいトーンに驚いて向き直ると、そこにはこちらを優しく見つめる瞳が。


「え…?う、うん…。」

「元気だったか?」


そう言うと同時に、太い指先が頬をそっと優しく撫でた。




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