IF…

□始動
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「さっきは、マジで悪かったな…」




カントクが他の新入部員達の身体を視て回っていると、さきほどの彼が改めて謝って来た





『あー、別にいいよ。男に間違われるのはしょっちゅうだし、男みたいな格好をしているオレも悪い。お互い様だよ』





そう言ってやると、安心したように胸を撫で下ろした

相当気に病んでたらしい





『あ、オレ、青峰遥輝。よろしくな』

「ああ、オレは火神大我だ」

『おう、よろしく!タイガ』




挨拶を交わすと、タイガの番が回って来た

カントクは改めて、まじまじとタイガの身体を見つめると、声が出ないほど、驚いていた

まぁ、高1にして、これだけの身体を持っているヤツは少ないだろう

驚くのも無理ない




「カントク!いつまでボーッとしてんだよ!」

「ごめんっっ!で、えっと…」

「全員視たっしょ?火神と青峰でラスト」

「あっそう?…れ?」




主将の声で我に帰ったカントクは、キョロキョロと辺りを見渡した




「…黒子くんってこの中にいる?」

「あ!そうだ!帝光中の…」

「え!?帝光ってあの帝光!?」




先輩達が黒子ってヤツを血眼になって探している





『(え?黒子!?黒子ってまさか…)』




その名前には聞き覚えがあった

大輝がよく楽しそうに話していた中でも、よく聞いた名前だ

そう言えば、大輝から聞いた“キセキの世代”達の進学先

けど、その中に“黒子”の名前がなかった…

その中に、“誠凛”の言葉も出てこなかった

ってことは、マジで…誠凛に…!?




「今日は休みみたいね。いーよじゃあ、練習始めよう!」

「あの…スミマセン…黒子はボクです」




突如カントクの目の前に現れた黒子




「きゃぁぁあ!?」




いきなり、目の前に現れた彼にカントクは驚き、悲鳴をあげた





『(うん、間違いない!“黒子”君だ)』





先輩達は影の薄い黒子君が言った元帝光中出身で試合にも出ていたと言う言葉に対して、本当に帝光中だったのか、選手だったのか疑問を持っている

まぁ、疑いたくもなるよな…

帝光中と言えば、バスケをやっていた人間なら誰しもが一度は聞いたことのある有名強豪校だ

その元部員、しかも試合に出ていたともなれば、こんな一見、影が薄くて、線が細くて、弱そうな人間を帝光中バスケ部出身だとは思わないだろう

だけど、オレは知っている

彼がどんな人間か…





「あ、そうそう。すっかり忘れてたわ!彼女をちゃんと紹介しないとね!青峰さん」




色んな騒動があったせいで、自分も自己紹介するのをすっかり忘れていた





「えー、さっきも言ったように、彼女は一見、男の子にも見えるかもしれないけど、正真正銘女の子よ。そして、マネージャーです!」





カントクがオレの紹介をし始めると、少し動揺が起きた





「けど、それは当初だけ!彼女には私の意向もあって、コーチ、トレーナーも兼任してもらうことになりました!」

「え?コ、コーチ?トレーナー!?」

「けど、カントク?この子、生徒だよね?」

「あら?コーチやトレーナーを生徒が行うのは可笑しいかしら?だったら、カントクを生徒である私がしても可笑しい話しよね?」





カントクがそう言うと、みんな黙った

そして、今の会話で分かったことがある

それは、カントクが最高権力者だと言うこと

カントクなんだから、当然のことなんだけど、カントクも先輩達と同じ学生

部活から離れたら、同じ校舎で同じ勉強をする学生同士だ

それでも、カントクがカントクでいられるのは、それ相応の仕事をしているからだ

つまり、オレも、それ相応の仕事をしなければ認められないと言うことだ





「青峰さん。そんな怖い顔しなくてもいいわよ」




どうやら、考えていたことが顔に出ていたらしく、カントクに肩を叩かれて我に返った





『あ、青峰遥輝です。至らない点はいくつかあると思いますが、オレなりに頑張りますので、よろしくお願いします!!』





深々と頭を下げると、拍手が送られた





「中には、彼女の存在、名前からして知っている人もいると思うけど、知らない人もいるだろうから言っておくけど、彼女はまだコーチ、トレーナーとしてはまだ未熟よ。けど、彼女にはコーチ、トレーナーとしての素質はあるわ。だからお願いしたの。もし、納得のいかない人がいるようであれば、何なりと私に言ってきてね」




と言いつつも、文句は言わせないと言ったオーラをかもし出すカントク

みんなそのオーラに気付いたのか、誰も何も言わなくなった
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