IF…

□入学
2ページ/3ページ

誠凛が近ずくにつれてだんだんと誠凛の制服を着た生徒が増えていく

そんな中でもオレは注目を浴びていた

見渡す限りの女子達はみんなスカートを履いている

そんな中で、唯一のパンツスタイル

だから、異色なオレは必然的に注目を浴びてしまっている

だが、スカートなんぞを履くよりは全然マシだ





「よっ!」




注目を浴びながらも、平然と歩いていると、後ろから軽く肩を叩かれた





『なんだ、颯太か』




コイツ、元町颯太(もとまち そうた)とは小学校、中学が一緒で仲も良かった

ウチの中学から誠凛に進学したのはオレとコイツだけ

だから、コイツは唯一オレの事情を知っている奴だ




「みんなお前のこと見てんぜ?」

『そりゃそーだろーな』

「今日くらいスカートで来りゃ…」

『絶対ヤだね』





明らかにコイツは楽しんでいる

中学の時もスカートの下に必ず長ジャージを履いていたオレ

履いていなかったのは、入学式と卒業式くらいだ





『この格好だって正装なんだ。問題はねーだろ』

「問題うんぬんじゃなくて、俺の気分」

『だと思ったよ』





そんな会話をしつつ、学校に向かい、体育館へと足を踏み入れた

受け取った名簿を見つつ、指定された席へと向かった

そんな最中も、オレはまた視線を集めていた




『(分かってはいたが、そろそろマジでウザい…)』




席へと座るが、まだ式が始まるには時間がある

気だるげに式が始まるのを待っていると、隣に人影を感じた




「初めまして」




オレの隣に座った男子生徒

出席番号でオレの次の奴だ





「このタイプの制服があるのは知ってたけど、本当に着てる人がいるとはね」

『何かモンクあんの?』

「いや、別にないよ。気分を悪くしならゴメンね?ただ、珍しなって思っただけなんだ。俺は朝岡優(あさおか すぐる)。よろしくね」

『ああ。オレは青峰遥輝だ』




終始ニッコリと笑う朝岡

そんな表情から、本当に悪気はなかったんだと思う





「本当に遥輝って言うんだね」

『は?どーゆー意味だよ』

「てっきり、俺は名簿を見ただけだと男子だと思ってから。実際見てみたら女の子だし、なら違う読み方をするのかな?って思って」

『まんまだよ』




ゆっくりと穏やかな話し方をする朝岡

よく喋る奴だ

そんな朝岡はまだ口を閉じることをしない





「遥輝ちゃんは…」

『ちゃん付けすんな。気持ちわりー』

「じゃあ、遥輝。キミは女の子なんだよね?」

『男なのに、こんか格好をしてたら、ただの変態だろうな』

「なんでスカートを履かないの?」

『スカートが嫌いだから。それ以上でもそれ以下でもない 。これも正装なんだから問題ないだろ』

「話し方も男子みたいだ。一人称も俺だし…遥輝は性同一…」

『じゃない。ちゃんと自分が女だと自覚してる』




まあ、たぶん大概の奴はそう思うだろうな




「そっか。失礼なコトを言ったね。ゴメンね?」





朝岡とそんな話をしていると式が始まった





[新入生代表挨拶。新入生代表、朝岡優]

「はいっ!」

『(コイツが新入生代表か…)』




スクっと立った朝岡は、壇上へ向かう前に俺の方をチラッと向いた





「行ってくるね」





小声でそう伝えると朝岡は壇上へと上がった

別に伝えなくてもいいのに…





[暖かな春の訪れと共に…]





校長を目の前にして代表の挨拶をする朝岡

こちらからは朝岡の背中しか見えないが、声色からして先ほどの朝岡とは別人のようだ






[新入生代表挨拶。一年A組、朝岡優]




代表の挨拶を済ませた朝岡の顔はキリっとしていた





「緊張感したよ…」




だが、席に戻るなり先ほどの朝岡に戻った





『式の真っ最中だ。黙っとけ』





それだけを言うと、それ以降、朝岡は話しかけてこなかった




長々しい入学式を終え、教室へ戻ると担任の挨拶や、自己紹介が終わり、やっとのことで、その日の全てが終わった
次へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ