FIGHT!!(BASKET BOLL)
□過去
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学校から家までは最短で15分
その間には待ち伏せには最適な人通りの少ない路地や、公園がある
そこを通らずに遠回りすれば帰ることも出来るが、もし待ち伏せしているなら、オレがそこを通らなかったら奴らを逆なでしてしまうことにもなりかねない
だから、あえていつも通りの最短ルートで帰ることにした
『(コタやマコにはああ言ったけど、やっぱ怖ぇよな…)』
もう日が暮れ、あたりは真っ暗だ
そんな帰り道を、ドキドキしながら帰っていた
『(やっぱり…)』
公園の近くまで来ると、何人かの人影が見えた
そこには見慣れない制服を着た奴らまでいる
『(高校生と繋がりがあるってのは本当だったんだな…)』
そう思うと自然と足が止まった
けど、ここまで来たらもう引き返せない
オレは腹をくくって歩き出した
「よぉ、翔平」
公園の前を歩いていると、オレに気づいた辰馬が声をかけてきた
「正義感たっぷりなお前のことだから一人で来ると思ってたよ」
『オレもお前のことだから、いると思ったよ…』
「なら話は早ぇ。オレの屈辱果たさせてもらおうか…」
どこぞのマンガのようなセリフだ
逃げたい気持ちとは反対に足を奴らの方に向けてた
全部で7人
辰馬以外はみんな高校生だ
『全員いるわけじゃねーんだな』
「お前を相手するのに、そう何人もいらねーだろ」
『なら、後ろの高校生もいらねーだろ』
「オレの話を聞いた先輩達もお前に腹立ったみてーで、一発づつ殴りてーんだと」
意味がわからない
と言うより、それはただの口実で、自分より実力のある高校生を使ってオレをボコろうってことだろう
『お前がそうしたいなら、そうすればいい。…けどお前、今のままで楽しいのか?』
「…何がいいてーんだよ」
『お前はチームの誰よりもバスケを楽しんでいた。だから、バスケをしてねぇ今は楽しいのかって聞いてんだよ!』
辰馬もアニキ達がいる頃は楽しんでバスケをしていた
けど、辰馬が本気でバスケをしなくなったのは中二の全中前からだ
勉強よりもバスケに夢中だった辰馬のことだから、初めは真面目にやらない先輩達に呆れてバスケに対する気持ちが薄れてしまったのだと思っていた
たぶん、それもあるんだろう
けど、一番の理由は家庭環境だ
それは6年前、まだオレ達が小3だった頃から始まる
「翔平!今日遊ばね?」
放課後、帰り支度をしていると辰馬に声をかけられた
『んー…4時くらいまでならいいよ?』
「何かあんの?」
『今日はミニバスの練習があるんだ』
「ミニバス?何ソレ!楽しそー!!」
オレと仲のよかった辰馬はオレを追いかけるようにミニバスへと入ってきた
「翔平!今日も練習行くだろ!?」
『あたり前じゃん!』
それからオレ達はどんどんとバスケにのめり込んだ
けど、オレには気になることがあった
『なぁ、辰馬。お前いつになったらバッシュ買うの?』
辰馬がミニバス入って早半年
だが、辰馬の足元はずっと学校のボロボロな上履きのままだった
「ウチ、ビンボーだからさ」
これは辰馬の口グセだ
と言うのも、辰馬は3日に1回くらいのペースで同じ服を着ているし、今履いている上履きだって今にも穴が開きそうなくらいだ
他にも体操服、クツにくつ下
辰馬の持っている物のほとんどはボロボロだ
けど、辰馬はそれを感じさせないほど持ち前のテンションで人気者だった
だが、バスケをやる上ではバッシュは必需品
ダッシュやジャンプなどが多いバスケをクツ底の薄い上履きでやるのには限界がある
『辰馬。これやるよ』
「え?」
オレの手にはバッシュが置かれている
『兄ちゃん、足が大きくなっちゃって、このバッシュだと足がキツいんだって。辰馬、このサイズなら履けるだろ?』
「いいの?」
『兄ちゃんがずっと履いてたからボロボロになっちゃったけど…』
「全然いいっ!ありがとう!!」
辰馬にバッシュを渡すと辰馬は満面の笑みでバッシュを抱きしめた
例えボロボロでも念願のバッシュだ
それほどバッシュが嬉しかったんだろう
その日から辰馬はそのバッシュを大事に扱った