FIGHT!!(BASKET BOLL)

□決行
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翌日

今日、オレは決行する

だが、そのことを思うと鼓動が速くなる

授業中だと言うのに気が気じゃない

そして、迎えた部活

オレを除く三年は体育館へ顔を出すが、いつも通りステージでゴロゴロし始めた

一年は部活の準備に追われ、二年は体育館のスミで上履きからバッシュに履き替えている

オレもその隣で、バッシュに履き替えた

だが、残りの三年はステージでゴロゴロするだけで、バッシュに履き替えることすらしようとしない




『なぁ…』

「どうしたんすか?主将。そんな怖い顔して」




オレの隣でバッシュに履き替えている後輩に声をかけた

オレの顔は無意識に強張っているようだ




『お前は今の部活で満足か?』

「…え?」




後輩はオレの問いかけに黙ってしまった




『ここなら、奴らからは聞こえない。…正直に言ってくれないか?』

「……部活が楽なら、それに越したことはないですけど、正直…物足りないと言うか…」

『お前達もそうか?』




他の後輩にも声をかけると、賛同するように黙った




『本音…だな?』

「え?あ、はい…」

『なら行ってくる』




それを確認すると、立ち上がった




「え?主将!?」

「行くって、どこ行くんすか!?」

『アイツらの所だ』

「アイツらって、先輩達の所ですか!?何する気ですか!?」




ステージへ向かうと、それを心配するように後輩が声をかけた

ウチの三年達は同学年からも恐れられるような人間達ばかりだ

当然、後輩達も怖がって奴らから一定の距離を保っている

そして、昨日までオレも奴らから距離を置いていた

それは後輩達も知っているだろう

なのに、そんな奴らの元に行こうとしているんだ、後輩達も驚き心配している




『オレは…本気でバスケをやりたいんだ。けど、それをアイツらがジャマしてる。だから、やる気がないなら出てってもらう』

「や、やめた方がいいですって!!」

「そうですよ!ウワサでは先輩達のバックには凶暴で有名な高校生もいるって言うし…」




どこまでが本当かは定かではないが、奴らはこの辺でも有名なチンピラまがいな高校生と仲がいいとウワサされている

どこで道を違えたかはわからないが、奴らも元をたどれば、ミニバス時代一緒に切磋琢磨した仲間だ

話せばわかってくれるとまでは言わないが、オレ達が本気でバスケをするためには、奴らに物申すしかない




『心配してくれてありがとうな…けど、オレは言うって決めたんだ』

「やめましょうよ!オレ達、先輩達に目を付けられるくらいなら、今のままで十分ですから!」

『お前達は関係ない。これは全てオレの独断だ。もし、お前らに危害が及ぶようなことがあったとしても、オレが全部体を張って止めてやる。だから、お前達は安心してバスケを続けてくれ』

「先輩…」




止めようとする後輩達を押しのけてオレはステージに向かった




「オイ、翔平。まだ練習しねーのか?」





オレがステージの前に立つと、オレとミニバス時代で同じチームで仲のよかった辰馬がオレに声をかけた




『お前らが体育館から出てったら始めるよ』

「は?」



オレがそう言うと気分を害したのか、オレを見る目が変わった




『バスケをする気がないなら体育館から出てってくれ』

「そーゆーなよ、翔平。オレ達の仲だろ?」

『だから、言ってるんだ』




今にでも一発触発しそうな雰囲気に、後輩達だけではなく、同じ体育館で練習している他の部活の奴らまで手を止めた




「オレ達がジャマだって言いてーのか?」

『…そうだ。真面目に部活をやるって言うんなら、話は別だが、やらないんならジャマだから出てってくれ』

「…お前らもそう思ってるのか?」




一人が後輩達に声をかけると、後輩達は黙った

イエスと言えないことをわかってて言ってるのは目に見えている




『コイツらがそう思ってなくても、オレがジャマだと言ってるんだ』

「お前…何様だよ!」

『オレはこの男子バスケ部の主将だ!お前達を出て行かせる行かせないかは全て主将のオレに権限がある!』




主将、副主将を決める時、オレは半ば強引に主将の肩書きを押し付けられた

めんどくさい仕事はしたくないんだろう

正直、オレは主将の器ではない

三年の中でオレより上手い奴はいる

けど、任されたのはオレだ

だったら今、この主将と言う立場を存分に使ってやる!




『オレ達は半年もしない内に引退する。けど、後輩達にはまだ先がある!後輩達の中にはオレ達よりも上手い奴がいる!そんな後輩達の芽を潰させるわけにはいかない!』




コイツらはいろんな後輩達の道を潰してきた

コイツからの重圧に耐えられなくて退部して行った二年生

コイツらの存在を知って、入部をしなかった一年生

今いる後輩達は、コイツらの重圧に耐えてでもバスケをしたいと残った奴らだ

後輩達の中にはミニバス時代にMVPに選ばれた奴だっている

そんな後輩達の将来の芽を潰させやしない




「エラソーな口叩きやがって…!」




オレの真っ直ぐな目が気に入らなかったのか、辰馬は勢いよく立ち上がった




「なんだよ、その目は!!」




辰馬はステージから降り、オレの胸ぐらを掴んだ




「さっきからキレーごとばっか言いやがって…!優等生気取りか!!」

『そんなつもりはない!ただ、オレは真面目にバスケがしたいだけだ!!』




それでも、真っ直ぐ見つめる目にイラ立ちが募って行くのがわかった





「オレ達にビビって何も言えなかったお前が今さら何言ってんだよ!!」

『ああ、オレはお前らにビビって何も言えなかった!けど、そんな自分に嫌気が刺したんだ!オレがバスケを続ける以上、オレは本気でバスケをやりてぇ!その上で、本気でやらないお前達がジャマなんだっ!!』




最後に言った“ジャマ”の一言で何かがキレたのか、奴は腕を振りかぶった

何をされるかわかったオレは反射的に目をつむろうとしたが、あえて目を開けた

その瞬間に左の頬に激痛を感じ、その反動で床に倒れこんだ




「先輩っ!!」

「主将っ!!」




体育館には他の部活の女子の悲鳴や、オレを心配する声が響いた

何人かの後輩は倒れこんだオレを心配して駆け寄って来てくれた




「あーそーかよ!!わかったよ!!こんな部、こっちから願い下げだっ!!」




奴はそう言い捨てて、辰馬は他の連中を連れ体育館から出て行った
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