HIKARI 短編集

□もしも、主人公が秀徳高生だったら…
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日本の高校に進学するために、片っ端から高校を探していると、ある一つの高校にたどり着いた




『秀徳高校か…偏差値も高いし、バスケも全国出場を何度か経験してる…』




まさに文武両道

当時の担任に相談してみれば、俺の成績なら問題ないとのこと

そして、俺は即決した









日本へと帰国し、秀徳高校へと入学して早数ヶ月が過ぎた

入学当初は双子の弟、大輝と間違えられ、大輝ど同中だった緑間を始め、先輩方や同級生にも驚かれたが、今となっては緑間をシン、高尾をカズと呼ぶほどになった




「何をしている。さっさと乗るのだよ」

『いや、気持ちはありがてぇんだけどよ…』




そして、目の前に現れたのは自転車にくくりつけられたリアカー

秀徳高校名物、ミドリ号

ちなみに、本人達以外の生徒がそう呼んでいるだけ

名前の由来は、いついかなる時もカズが引くリアカーにシンが乗って現れるからだそうだ

実際、リアカーをどちらが引くかでジャンケンをするらしいが、いつもシンが勝つと言う

そして、今日も当然のようにカズが自転車にまたがり、シンがリアカーに乗る




「ほら、何ボサッとしてんだよ」




自転車にまたがったカズが早くしろと催促してくるが、正直乗りたくない

今ではだいぶその光景にも自分を含め多くの生徒達が見慣れてきたが、いざ自分が乗るとなると抵抗がある

シンは熱烈なおは朝占いの信者など、一風変わった面があるが、改めて平然とリアカーに乗るその神経を疑う

俺はそこまで神経図太くねぇぞ…




「ほら、早くしろって!」




ちなみに、なぜ俺が乗るハメになったのかと言うと、今日の練習中にカズと接触してしまったからだ

接触と言っても、軽くぶつかったぐらいだが、当たり方が悪かったのか、古傷の右ヒザを負傷してしまったからだ

そして、お詫びも兼ねてとカズがリアカーで家まで送ると申し出た




『いや、いいよ。痛めたって言っても歩けねぇわけじゃねぇし』

「ケガを甘くみるな。もうじきインハイ予選が始まる。監督も先輩達もお前の実力を買っているのだ。ならば、少しでも負担のかかることを避けるべきなのだよ」

『負担ならカズの方が大きいだろう』




ガタイのいい俺とシンを運ぶんだ

シン1人でもヒーヒー言ってるのに、俺まで乗るわけにもいかないだろう




「オレはいいんだって。それに今日ぶつかったのだって、オレのファウルのせいなんだし」

『いや、でも…』




もちろん、カズのことも心配しているが、何より俺が乗りたくないだけだ




「男のクセにウダウダとうるさいのだよ。少しは弟を見習え」

『あのバカと一緒にすんじゃねぇよ!』




俺は無理矢理シンにリアカーに乗せられ、俺が乗るのを確認するとカズはペダルをこぎ始めた




「…何をしているのだよ」

『…ほっとけ』




校外に出ると、この光景に見慣れない地域住民達からの視線が痛い

少しでも隠れようと学ランの下に来ていたパーカーのフードを深く被った

この痛い視線にも動じないシンの神経には、ある意味尊敬する




「…お前と青峰では、だいぶ性格が違うのだな」

『なんだよ突然』




風で飛ばされそうになるフードを深く被り直しているとシンが口を開いた




「遥輝とはまだ少しの付き合いだが、改めて双子でも性格の違いを感じさせられているのだよ。特にこの前の練習試合でな」

『ああ、アイツは全てに置いて横暴なところがあるからな』

「プレイスタイルが違うのは、留学していたからか?」

『いや、元から違ぇよ。俺と大輝は見た目は同じだが、性格からプレイスタイル、頭の出来まで全てに置いて違う』




だからこそ、俺は大輝から離れたんだ

双子なのに、トコトン違うからよく比較された

アイツと同じ性格、同じプレイスタイルならどれだけよかっただろうか




「なぜ、青峰と同じ高校に進学しなかったのだよ?日本の高校事情に詳しくなければ、青峰と同じ高校に進学したらよかっただろう」

『…俺とアイツは違う。だから、比較されんなら、トコトン比較されてやろうじゃねぇかって思っただけだ』

「…なるほどな」

『俺はここで正解だったと思ってるよ。勉強に集中できる環境もあるし、バスケも強い。俺は自分の道を真っ直ぐ進む大輝と違って周りに流されるタイプだからな。だから、周りに優れた奴がいればいるほどヤル気が出る。俺には持ってこいな学校だ。だから、頼むぜ。エース様』

「…フン、オレは人事を尽くすだけなのだよ」

『それでいいんだよ、エース様は』









「ほい、到着!」




家に着く頃には、カズは肩で息をしていた




『悪かったな。部活でも疲れてたのに』

「いいって!真ちゃんのついでた」

「ちゃんと、ヒザを冷やして置くのだよ」

『はいはい』

「じゃあ、明日学校でな!」

『おう、気をつけろよ!』

「安心しろ!ウチのエース様を丁重に送り届けるぜ!」

『バカ。お前もだよ!』



そう言ってカズは再びペダルをこぎ始めた




『インハイまで、あと少し…』




秀徳高校は全国出場経験を持つため、“王者秀徳”とも呼ばれている

王者は王者のプライドを守り抜き、挑戦者は挑戦者の意地で王者を引きずり下ろそうとしてくる

そして、その猛攻がすぐに迫っている




『まずはヒザの調子を戻さないとな…』




改めて決意を固め、オレは前だけを向いて進むだけだ…!!
 

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