HIKARI 短編集

□オバケなんてないさ
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この日、オレと黒子、火神はクラスの掃除当番のために、遅れていた




ーピシッ




そろって着替えていると、どこからか物音がする




ーピシッ

ーピシッ




「な、なんだ!?」




着替えていた火神は手を止め、辺りを見渡していた




『何かが軋んでる音だろ』




俺と黒子は気にせず着替えを続けた




「気温や湿度のせいで、軋むことはよくあることです。それよりも早く着替えて部活に行かないとカントクに怒られますよ?」

「けどよ〜」




それでも火神はデカい図体を震わせて、手を止めたままだった





『安心しろ。お前が思ってるようなラップ現象なんかじゃねぇよ』

「わかんねぇだろ!?ほら、よく言うじゃんか!公共施設は昔使われてた墓とか火葬場の跡地だって!」

「どこで得た知識ですか…」

「小金井先輩が教えてくれたんだよ!ここもそうだろうって!!」




やたらと怯えてたのは小金井先輩のせいか…

おそらく小金井先輩は面白半分のつもりだったんだろうが、どうやら火神は本気にしてしまったようだ

余計なことを…




『この東京だけでも、どんだけ公共施設があると思ってんだ!そんなこと言ったら、東京のほとんどが墓場か火葬場だぞ!』

「け、けどぉ…」




ーガタッ




「今度は何だ!?」




ーバサバサ




怯えている火神にさらに追い打ちをかけるようにロッカーの上に積まれてあったプリントが突然雪崩のように落ちて来た




「っ!?や、ヤベェって!ここマジで何かいるって!!」




呆れていた黒子だったが、さすがに落ちて来たプリントには驚いていた




『あれは、小金井先輩が無造作に置いたせいだろ』




小金井先輩は、ロッカーを開ければ、私物が雪崩のように落ちてくるなどと、普段から結構雑な人だ

プリントに関しても、ロッカーに入りきらなかった不要のプリントをロッカーの上に積み上げていた物だ

以前から、いつか落ちて来るんじゃないかと心配していたため、プリントが突然落ちて来たくらいじゃ驚かない




『それに、さっきの音だって、他の部活の連中だろうよ』




部室棟は二階建てのアパート形式で、バスケ部の部室は一階の真ん中にある

つまり、両脇には他の部活の部室に挟まれている状態だ

しかも、簡易的な建物のせいで、他の部室から笑い声や上の階の暴れている音も聞こえるし、ドアが閉まれば反動でロッカーが揺れる事もしばしばある




「けど、今は部活中だぜ?人なんて…」

『現に俺らが今いるだろ。俺達みたいに掃除当番だったのかもしれないし、忘れ物を取りに来たのかもしれないだろ』

「でもさ!」




俺が何と言おうが、火神は納得しないようだ




『デカい図体してガタガタ言うんじゃねぇよ!』

「図体は関係ねぇだろ!!」




今もなお、ガタガタと震えている火神を放って置いて部室から出ようとすると、火神に腕を思いっきり引っ張られた




『いって!!何だよ!?』

「ま、待てよ…オレの着替えが終わるまで…」




デカい図体には似合わないほどのか細い声

どんだけビビってんだ…コイツ…




『なら、あと5秒待ってやる。それまでに着替えろ!』

「ご、5秒!?短すぎねぇ!?」




と、言いつつも間に合わせようと着替え始めるが、一度震えた手は治ることなく、着替えにも時間がかかっている

おかげで30秒もかかった





『ホラ、行くぞ!』



やっと着替え終わった火神も連れて体育館へと向かうが、その道中、火神はずっと俺の腕を組んだままで、すでに練習を始めていた部員達に変な目で見られてしまった…
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