HIKARI 短編集

□調理実習
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「今日はピザとプリンを作ります!」

「「「はーい!!」」」




今日の3、4時間目は調理実習

調理内容は今言われた通りだ

各班それぞれエプロンと三角巾を頭に巻き、用意された材料に手を伸ばした

ちなみに、班は男女3人づつの6人構成で出席番号順だ




「じゃあ、男子達はピザの生地を作ってもらっていい?」

『わかった』

「おっけー」




黒板に書かれた手順の通りに事を進めていく

生地を練る作業は力技

男子の方が適しているとの判断だろう




「うわっ!生地が手に張りつく!きもちわりぃ…」




生地を混ぜ始めた飯田が、さっそく音を挙げた

普段料理なんてしないんだろう




『きもちわりぃなんて言うなよ…食いモンだぞ』




その後も飯田は生地と格闘していく




「よぉし!これでどーだ!」




生地を混ぜ終えた飯田は自慢げに綺麗にまとまった生地を見せてきた




『何だかんだ言いながらもキレイに出来たじゃねぇか!』

「オレに任せりゃ、こんなモン楽勝よ!」




さっきまで、きもちわりぃとか言ってたくせに…

飯田が生地と格闘していた向かいでは女子達がキャッキャッ言いながらプリンを作り始めていた




『じゃあ、生地を寝かしている間、生地に乗せる具材を切るか』




ここからは俺と相葉の出番だ

俺はピーマンを、相葉はタマネギ担当だ

俺がピーマンを水洗いしている横で相葉がタマネギの皮を剥いていた




「なぁ、遥輝。…タマネギってどこまで剥けばいいの?」

『は?』




相葉が持つタマネギは、ずいぶんと小さくなってしまっていた




『待て待て待て!剥きすぎだ!!むしろ、どこまで剥くつもりなんだ!?』

「え?どこまでって…どこまで?」




コイツ、タマネギ1つ剥けやしないのか!?

過去に剥く機会なんて山ほどあったろ!?

まだ使えそうな残骸を拾って綺麗に洗うと、まな板の上に置いた




『とりあえず、タマネギを切ろ!火が通りやすいように、なるべく薄くな』

「りょーかいっ!っと!!」

『って!待てー!!』

「ん?」




ースパンっ!!




相葉はタマネギに向かってまっすぐ包丁を振り落とした

その姿は、まるで薪割りをするかのようだった

これには、プリン作りに集中していた女子達も驚いていた




「ち、ちょっと!相葉君!!」

「包丁使ったことないの!?」

「え?でも切れたぜ?」

『そーゆーこっちゃねぇよ!!』




斧で割られた薪のようにパックリ割れたタマネギ

その結果に相葉は疑問1つ持っていなかった




『もういい!俺が切る!お前らは女子の手伝いでもしてろ!』




相葉から引ったくるように包丁を取り上げると俺はタマネギと種を取り終えたピーマンを素早く短冊切りした




「スゲー!もこ〇ちみてぇ!!」




見せつけているわけではないが、班のみんなからは料理番組を見ているようだと絶賛された




「いつ嫁に行っても大丈夫だな!」

『婿に行くことはあっても、嫁に行くつもりは毛頭ないわ!』




膨れ上がった生地を二つに分け、相葉と飯田で丸く引き伸ばし、その上にトマトソース、タマネギ、ピーマン、サラミ、チーズを乗せオーブンに突っ込んだ




『後は焼き上がるのを待つだけだな』

「早く食いてぇ!」




時刻は11時過ぎ

食欲旺盛な男子高校生にとっては、空腹になる時間だろう

かく言う俺も腹の虫が鳴っている




「こっちも、後は蒸している間にカラメルを作るだけだよ!」




女子達も蒸し器にプリンをセットし、カラメル作りに取りかかるところだった




『カラメルって、結構めんどくさいんだよな』

「そーなのか?」

『カラメルは砂糖を使う分、焦げやすいんだ。だから常に目を離さず、かき混ぜてなきゃならないんだよ』

「え?けど、女子達目を離してるけど…」

『え゛?』




カラメルの材料が入ったナベは火にかけらているにも関わらず放置され、担当であるはずの女子達は女子トークで盛り上がっていた




『ダメだろ!!』




焦げる前にかき混ぜたからよかったものの、ちょっとでも遅ければ俺達班はカラメル抜きになる所だった




「あっ、ゴメンねぇ?」

『…俺がかき混ぜてるから女子トークでも何でもしてていいよ』

「え?いいの!」

「ありがとう!助かる!!」

「そうそう!でねぇ…!」




いいとは言ったけど、マジで丸投げすんなや!

ちったぁ自分の仕事をしろよ!




「…遥輝って尻に轢かれるタイプなのかもな。何でもはいはいってやっちゃうし」

『そう思うなら手伝え。今どきの男子は料理も出来なきゃモテねぇぞ』

「あ、大丈夫!オレ彼女いるし!」

「あ、オレもね」




相葉には4つ年上で大学生の彼女

飯田には中学からの同級生の彼女がいる




『リア充め…』

「ハッハッハ!何とでも言え!」

「けど、遥輝にもいるじゃん」

『は?』




彼女なんていないし、彼女がいるなんてウソをついたことも記憶にはない

コイツは誰と間違えてるんだ?





「ホラ、火神っていう旦那が!」

『はぁ!?火神ぃ!?しかも旦那って何だよ!』

「アイツ何かと遥輝に頼ってくるじゃん?」

「しかも遥輝、文句言いつつもアレコレしてやっちゃうし」

「オカンみてぇ!」




オカンって…

とうとう 嫁でも彼女でもなくなったか…




「あ、ソレわかるかも!この前プリントで指切っちまってさぁ!バンソーコー貼ろうとしたら、バンソーコー貼ると余計に治り悪くなるから貼らない方がいいぞ。って教えてくれたんだよ!」

「マジでオカンじゃん!つか、オレもこの前、頭痛ぇって言ったら痛み止めの薬くれたんだよね!」




相葉と飯田は俺がどんだけオカン化しているかを話し続けている




「そーいや、前に彼女がお前と火神が歩いてるとこ見て、お似合いねって言ってたぞ?」

『はぁ?お似合いってなんだよ!どこをどー見たらお似合いに見えるわけ!?お前の彼女って腐ってる人なの!?』

「腐ってるってなんだよ!!確かにオレの彼女は年上だけど、ピチピチの女子大生だ!!」

「相葉…それは違うって…腐女子って言って…」

「飯田まで!?腐女子ってなんだよ!!」




腐女子を知らないとか…

結構有名な言葉だぞ…




『腐女子ってBL好きな人のことを指すんだよ』

「BLってなに?」

『そっからか!?』

「BLってのは、ボーイズラブ。男性同士の同性愛の略称だよ」

「ああ、なるほど!彼女ん家にそーゆーマンガいっぱいあった!え?遥輝ってホモなの!?」

『違うわ!!』




コイツは天然と言うか…

アホと言うか…



「え?遥輝君ってホモなの!?」

『え゛…ちが…』

「でも、遥輝って男子からもモテそうだよね!」

「わかるー!メガネ男子いいよね!」

「しかも、メガネの時はインテリ系で誰も近寄らせないオーラがカッコイイし、メガネを外して部活やってる時は熱血系で汗流しながらバスケやってる姿もカッコイイし!」

「遥輝君って、女子ファン多いんだよね!」





いつの間にか話題は拡散され、別の班の女子達も話題に加わっている

つーか、ファンとか何だよ…

初耳だぞ!




「「「滅べイケメン!!」」」

『ちょっと待てー!!』




男子は男子で別の班の男子まで加わり俺に敵意を見せている




『つか、お前ら彼女いるだろ!!』

「男はいつでもモテたい生き物です!!」

『何だソレ!?』

「なぁ、遥輝。お前妹とかいねーの?」

『何を狙ってんだ…』

「だって、成績優秀、容姿端麗、帰国子女で運動神経バツグンのお前の妹だぜ?狙いたくもなるだろ!」

『狙うなっ!!てか、俺妹はいねぇし』

「妹は?」

「あ、知ってるよ!遥輝君って双子なんだよね?」

「え?そうなの!?」




部員達の間では俺が双子であることは、承知の上だが、そう言われれば、コイツらには双子だって言ったことなかったような…




「ホラ!桐皇に通ってる友達がイケメンがいた!って送ってきたの!」




1人の女子がそう言いながら、ケータイのフォルダから、気だるそうに登校?下校?している大輝の画像を探し見せてきた

オイオイ…

盗撮されてんぞ…




「うお!マジでそっくりだ!」

「え?桐皇の制服を着たお前じゃないよね?」

『んなことするかよ』

「名前は?」

『大輝だけど…』

「大輝クンかぁ!」

「あっ!もしかして、遥輝君の旦那は火神君じゃなくて、大輝クン!?」

「ウソっ!禁断の愛!?」

「きゃー!!」




なんちゅー妄想を広げてくれてんだ…

もう勘弁してくれ…









なんやかんやでカラメルも出来上がり、ピザもプリンも出来上がった




「「「いっただっきまーす!!」」」

『いただきます…』




目の前の料理に目を輝かせるクラスメイト達

一方俺は、人一倍仕事をさせられた上に、火神と大輝の変な妄想を膨らませられ、心身ともに疲れながらピザを口に入れた




「おお!うめー!!」

「さすが遥輝君!カラメルの甘さも丁度いい!!」

『そりゃどーも』

「いつでも火神の嫁になれるな!」

『その話題はもういいわ!!』




ピザを食べ進めていると、何やら教室の外が騒がしくなってきた




「あ、火神君!」




どうやら、体育だった火神のクラスは早めに授業が終わり、教室に戻る途中のようだ




「遥輝君、旦那様よ!」

『っ!!ゲホゲホっ!!』




女子の変な言葉のせいで食べていたプリンが気管支に入ってしまった




「ねぇねぇ、火神君!遥輝君好き?」

『ちょっ!』




ドア付近にいた女子が教室に戻る途中の火神を捕まえて変な質問をしていた




「遥輝?まぁ、好きだけど…」

「好きだって!」

「相思相愛!?」

『LOVEじゃなくてLIKEの方だろ!つか、お前も否定しろ!!』




火神の好き発言により一層盛り上がる女子達を抑え、火神に向かって吠えた




「つか、いい匂いすんな」

『調理実習なんだから当たり前だろ』

「何作ったんだ?」

『ピザとプリン』

「へぇ…」




関心なさそうに答える火神だが、目はよこせと訴えている

食欲旺盛な火神だ

きっと腹の虫が抑えられないんだろう




『ソレ食って、さっさと教室戻れ!』




まだ残っていたピザを1枚火神の口に押し込むと、なぜか女子達は再び盛り上がりをみせた

口に突っ込んだだけだぞ!?




「まさしく相思相愛ですね。おめでとうございます」

『っ!黒子!?』

「やっとくっつきましたね。先輩達にも報告しておきますね」

『そんな報告すんな!つか、やっとって何だよ!!』

「ダメだよ!黒子君!遥輝君には大輝クンもいるんだから!」

「大輝クン?遥輝君と双子の?」

「何で青峰の名前が出てくるんだよ」

『まぁ、これには深い事情が…』

「え?火神君、まさかの嫉妬?」

「男の嫉妬は醜いですよ、火神君。遥輝君もそれならそうと言ってください」

「嫉妬ってなんだよ!」

『言わねーよ!!大輝とも火神とも何ともねーんだから!!』




まだ盛り上がっている女子達

助け舟を出そうともせず、その光景を楽しんでいる男子達

騒ぎを気にせず各班を回って評価する教科担任

面白半分に女子達の話題に乗っかる黒子

なんやかんや話題にされながらも気にせず、まだ物欲しそうな火神




『カオスだ…』




こうして、色々誤解されながら調理実習を終えた俺達だった…
 

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