HIKARI 短編集

□高尾君訪問
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これは、まだWC予選が終わり、本戦がが始まる前の話



予選で秀徳と引き分けた俺達は本戦へのキップを手にした

今日は、そのご褒美と、休息を兼ねたオフ日だ

と言っても、学校があるため、完全なオフではない




『(さて、どーすっかなぁ。前のオフは火神とスポーツショップに行ったんだよなぁ)』




しかし、今日は火神は補習だ

小テストの点数が悪かったのと、普段寝てばかりいる罰だそうだ




『(あ、今日発売日だ)』




マンガやアニメ好きな俺

しかし、最近じゃ部活の方が忙しくて本屋に立ち寄る気力さえなかった




『(ずっと行ってなかったからなぁ)』




財布の中を覗くと、夏目さんが数人しかいなかった

ずっと行ってなかったから、大量購入になるだろうと踏んで、食費の分と合わせて途中のコンビニで福沢さんを数人おろした




『(おお、結構あるなぁ!ちょっと多めにおろしておいてよかった!)』




本屋に着くと、今日発売されたマンガの他に買えていなかったマンガが何冊にも積み上げられていた

それをウキウキした気持ちで一冊ずつ手に取って行くと、後ろから声をかけられた




「あれ?遥輝?」




振り向いてみると、そこには秀徳の高尾がいた




「って、何その大量のマンガ!」

『何って、俺の至福材料』




すでに俺の手には二桁を越えそうなくらいの、マンガが抱かれていた




「へぇ。遥輝でもマンガとか読むんだ」

『でもって何だよ…』

「いや、遥輝って何かお堅いイメージがあるから、マンガとか読まねーと思ってた」




どこから、お堅いイメージが出来上がるのだろうか

前に火神にも言われたなぁ

メガネってだけで、そのイメージが出来上がんのか?




『俺だって、マンガやアニメくらい見るさ』

「アニメも見るの!?さらに意外!」

『だから、俺のイメージって何!?』

「まぁ、マンガくらい誰でも見ると思うけど、その量多すぎだろ」

『ずっと買ってなかったからな』

「お互い予選やら何やらで忙しかったもんな」




お互いに、予選や練習を思い出して、少しげんなりした




『で、お前は?今日は練習ないのか?』

「今日はオフなんだわ」

『ウチと一緒だな。それで参考書とか買いに来たのか?』

「まさか!」




そう言って、高尾は手に取った数冊のマンガを見せてきた




「ってか、何で参考書だと思ったわけ?」

『だって、秀徳って進学校じゃねーの?』

「まぁ、確かにそーだけどな。けど、マンガくらい読むさ」




お互い、手にしたマンガを購入すると、店を出た




「もしかして、アニメとか録画してる?」

『まぁ、寝て見逃すこともあるからな』

「あはは!マジ意外!」

『意外、意外うるせーなぁ。勝手にイメージ作り上げたのそっちだろ』

「そう、怒んなよ。悪かったって!」




笑いながら謝る高尾に謝罪感はまったく感じられない




「じゃあさ、ワン○ースとか録画してる?」

『してるけど…』

「マジ!?DVDに焼いたりとかは?」

『一応…って、何だよ!またバカにするつもりか!?』

「違う違う!実は頼み事があってさぁ…」

『頼み事?』




高尾は手を合わせ、頭を下げた




「二○後編からの魚○島編を焼いてオレに下さい!!」

『は?』

「実は、オレもワン○ースが好きで毎週欠かさずに録画してDVDに焼いてるんだよ。けど、この前見直そうと思ったら、妹に上書きされててさぁ」




高尾は相当ショックだったんだろう

悲しそうに経緯を話し始めた




「しかも、焼きなそおうにもデッキには、もう残されてなくてさぁ」

『ああ…』




俺もアニメ好きなせいで、高尾の気持ちはよく分かる

誰しも好きなシーンは何度も繰り返し観たいだろう




『構わねぇよ。幸いにも俺は一人暮らしで、ウチのデッキは大容量。他に録画する奴もいないから、そこのシーンはまだDVDには焼いてないけど、デッキには残されてる』

「マジ!?」

『今日、この後の予定は?』

「ない!」

『じゃあ、ウチ来るか?余ってるDVDがあるから、焼いてやるよ』

「マジで!?助かるわぁ!!」




と言うわけで、急遽高尾を連れて家に帰ることになった




『ついでに、メシも食ってくか?いくら高速録画出来るっつっても、高画質で録画するとなると魚○島編は長ぇから、時間もかかるだろ』

「えっ!?いいの!?」

『一人暮らしだ。問題ねーよ』

「いやぁ、本当助かるわ!」




帰る途中でスーパーに寄り、夕食を買い足すと、再び家に向けて歩き出した



「本戦も、もうすぐだな…誠凛は初戦桐皇だっけ?」

『ああ。大輝との対戦を願ってたが、まさかこんなに早く当たるとは思ってなかったぜ』

「クジ運がいいのやら、悪いのやら…」

『まったくだ。ほれ、着いたぞ』




そんなに遠くない道のりだったが、一人より二人で何かしら話していた方が、いつもより早く着くような感じがした




「おっ邪魔しまーす!」




初めて入る部屋に好奇心があるのか、それともDVDへの喜びなのか、高尾はいつもよりテンションが高めだ




『デッキ操作出来るか?』

「おう!ウチと同じ機種だ!」

『なら、空のDVDがそこにあるから、好きに焼いてくれ。その間、メシ作るわ』

「サンキュ!!つーか、メシ作れんのな」




高尾は会話をしつつも、操作の手を休めなかった

器用な奴だ




『まぁ、一人暮らしだし。そもそもイギリスにいた頃はおじさんと二人暮らしだったから
、帰りの遅いおじさんに変わってメシをよく作ってたから大概の物は作れる』

「へぇ。いつでも嫁に行けるな」

『おかげ様でな』




今日の夕食はサラダとチンジャオロース、玉子スープだ



『ほら、出来たぞ』

「おっ!美味そー!!」




俺も高尾も食べ盛りな男子高校生

テーブルの上に置かれた食事はは3〜4人前くらいの量だが、食べれるだろう




「ってか、うめぇ!!」




高尾は操作を一旦止めて、律儀に手を合わせてから食べ始めた




「大量のマンガに、大量のアニメ。美味いメシもあるなら、オレいつでも来たいわ!」

『どんだけだよ…ウチは大輝だけで手一杯だぜ?』

「え?青峰と一緒に住んでんの?」

『アイツは実家暮らしだ』




高尾は早く操作にかかりたいのか、ただ単純に腹が減ってたのか、どんどんとメシを口の中に放り込んでいく





『けど、ここに来れば文句言われることなく自由がきくせいか、よく来るんだ』

「ご両親って厳しいの?」

『まさか。厳しかったからあんな奴が出来上がるかよ』

「だよな…」

『アイツは、勉強も部活もサボるから、母さんの小言が絶えないだけだ』

「駆け込み寺ってワケだ」

『そーゆーこった』
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