IF…

□始動
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翌日の放課後、クラスの掃除当番で遅れてしまったため、オレは足早に体育館へ向かっていた

今日から、仮だけどバスケ部が始動するのだ

掃除当番ではないヤツはもう体育館へ向かっているハズだ





「青峰さん?」




体育館へと通じる廊下を早歩きで歩いていると、呼び止められた





『カントク』




オレを呼び止めたのはカントクだった




『すみません。掃除当番で遅れてしまって…』

「いいのよ。私もそうだし」




カントクは“私も相田でア行だから”と笑って付け加えると、バスケの部室へと案内してくれた





「私はカントクだから、着替える必要がないけど、青峰さんはコーチも兼任しているから着替えが必要よね?」

『そうですね』

「今は誰もいないから、ここで着替えてちょうだい。今後はどーする?さすがに男子が着替えている中に女の子を入れるワケにもいかないし…女バスに頼んで女バスの部室で着替える?」




風呂上がりに毎日パンツ一丁で歩き回る大輝を見ているから男の体は見慣れているが、オレも一応女だし…

部員達もみんな男だ

見た目は男でも女である以上、それはマズイだろう





『んー…女バスの方々がいいと言ってくれるなら、その方がいいかもしれませんね』

「なら、私から女バスに頼んでおくわ。とりあえず、今日はここで着替えて。私は体育館に行ってるから、着替えたら来てね」

『わかりました』




お世辞でも綺麗とは呼べない男バスの部室で誰も入って来ないように祈りながらササっと着替えると、バッシュを持って体育館に急いだ





『すみません。遅れました』





体育館のドアを開け、新入部員と思われる列に紛れると、なぜか他の新入部員達は上半身裸にされていた





「お前も新入部員か?」

『え?あ、そーだけど…』





オレに話しかけてきたのは大輝並みに長身のヤツだった

髪の毛は半分より上は赤く、目付きが悪い

体格もいいが、何よりオーラがハンパない






『(コイツ、上手そうだなぁ…)』

「何か知んねーけど、あの女カントクが脱げってよ」

『あー、そーなんだ』





だが、さすがにオレは脱ぐワケにはいかない

だから、それだけを言うと目線をカントクに移した

カントクは新入部員の上半身をまじまじと見ながら、それだけで的確に身体能力を当てていく




『(診ただけで、身体能力を当てていくなんて…カントクの名は伊達じゃねーなぁ)』

「オイ、オレの話聞ーてたか?」

『え?あぁ、脱げって言われたんだろ?』

「そーだよ!だから、お前も脱げよ」





コイツ、オレが男だと…選手だと勘違いしてんのか

まぁ、仕方ねーけどな





『オレはいい…って何すんだよ!?』






ヤツは、脱がないオレに腹を立てたのかTシャツを捲ろうとしてきた

間一髪でそれは阻止したが、それでもヤツは捲ろうと力を込めてくる





『だからぁ!オレは脱がなくていいんだって!!』

「はぁ!?何ワケわかんねーこと言ってんだよ!こっちは寒い中上半身裸にさせられてんだ!お前も脱がなきゃ不公平だろ!」





脱がないオレに腹を立てているのか、寒い中脱がすように指示したカントクに腹を立てているのか…

とりあえず、オレは脱がされないように死守することに必死だった




「コラァ!!」




そこに助けに入ってくれたのはカントクだった

カントクはヤツの身長に合わせるように、背伸びをしながらヤツの頭を叩いた





「何してるの!?」

「いや、だってコイツが脱がねぇから…」

「脱がなくていいのよ!まったく…女の子のシャツを無理矢理脱がそうだなんて…わいせつ罪で捕まりたいの!?」

「何でっす…え?女の子…?」

「そうよ!彼女は正真正銘!女の子よ!」




カントクのその言葉に、ヤツはもちろん、新入部員、そして、主将以外の事情を知らない先輩達も目を丸くしていた




「お、女ぁぁぁあ!?」

「ちょっ!?耳元で騒がないでよ!」

「女って、コイツが!?ですか!?」

「彼女以外に誰がいるの?」

「いや、どっからどー見ても男としか…」





間違えるのは仕方のないこととしてもだなぁ…

人を指差すのか止めろよ…





『紛らわしくして悪かったな。男みてーに見えるかもしんねーけど、オレは一応女なんだわ』

「“オレ”って…声も低いし…お前、本当に女なのか?」

『一応な。何なら証拠見せようか?』




手っ取り早く弁解するために、短パンに手をかけると、慌てたヤツが阻止するようにオレの手を掴んだ





「ちょっ!?おまっ!何してんだよ!?」

『何って証拠を見せようかと思って』

「わ、分かった!分かったから脱ごうとすんな!!」





少しからかったつもりだったが、バツが悪そうに耳を赤くさせる、彼に少し申し訳なさを感じた
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