IF…
□入学
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今日は入学式当日
オレは勉強の甲斐もなく、第一志望校に落ち、必然的に誠凛へ進学することになった
「だりぃ」
支度を済ませ、朝食を取っていると、遅れて起きた大輝が制服を少し着崩して降りてきた
『初日くらい、ちゃんと制服着ろよ』
「あ?めんどくせー。つか、何だよ、そのカッコ」
『あ?どっからどーみても制服着てんだろ』
「お前は海兵かよ」
制服を着たオレ自身も同じことを思ってしまったがために、大輝に返す言葉がない
『なら、お前と同じ顔でスカートに履き替えてやろうか』
「やめろよ、気持ちわりー」
性別は違うけど、ソックリに育ってしまったオレ達
おかげで、オレがスカートを履くと、自分がスカートを履いている姿を見ているようでイヤだと、大輝もオレがスカートを履くことを拒むようになった
「つーか、落ちんじゃねーよ」
『あん?』
「お前が落ちなきゃ、そんな制服着ることもなかったし、オレもそのダッセェ姿を見なくて済んだろ」
大輝の言う通りだが、大輝は受験ってモノを知らない
帝光中は決してレベルは低くないが、金さえ積めば大輝みたいなバカでも入れる
そんな帝光中で実績を上げた大輝は色んな学校から引っ張りダコだ
だから、受けても落ちる心配なく、受かる
ここまで楽に上がってきた大輝をギロッと睨むと、大輝はその只ならぬ雰囲気に気付いた
『簡単に言ってくれんじゃねーか…このバカがっ!オレの受けた学校をお前は知ってんのか!?都内でも有数の進学校だぞ!お前なんかが土下座しても、逆立ちしても入れてもらえないような所なんだぞ!各学校のトップを張ってる奴らでも落ちるくらい難関なのに、簡単に言うんじゃねーよっ!!』
「わ、悪かったから、朝から怒鳴るんじゃーねよ…」
『誰のせいだと思ってんだっ!!』
大輝とオレの成績は天と地との差がある
よって、大輝は言葉でオレに勝った試しがない
しかも、バスケの他に空手も習ってたオレに大輝は一本足りとも手を出してこない
いや、出せないんだろう
以前、オレをキレさせた大輝はもろに回し蹴りを喰らい、気絶した経験がある
いわば、トラウマだ
「おはよーございまーす!」
今にでもツノを生やしそうなオレに怖じ気ついていると、玄関先から元気な声が聞こえた
「また遥ちゃん怒らせたの?ちょっとは学習しなさいよ」
声の主は幼なじみのさつきだ
さつきは中学は大輝と同じ帝光中で、高校も大輝と同じ桐皇学園高校に進学する
だから、大輝のお目付役であるさつきは、あたかも自分の家のように上がって来る
「わー!遥ちゃんの制服姿だぁ!!」
あんまりこんなダサい姿を見られたくなかったが、さつきはそんなことを思ってはいないようだった
「高校は遥ちゃんと同じ学校に行きたかったんだけどなぁ…」
もちろん、オレの成績なら桐皇学園は射程距離内だったが、桐皇は制服がスカートしかない
だから、行くつもりは到底なかった
それに、桐皇学園へ行かない理由
それは、大輝にある
中学でバスケへの能力を開花した大輝は今では敵なし
そんな大輝はいつからか、バスケを本気でやらなくなった
昔は無邪気に笑ってた大輝も今では冷めた目しかしない
だから昔のような大輝に戻ってもらうために、オレは大輝を外から、さつきは中から大輝を変えていくことにした
「ほら、大ちゃんも早くご飯食べちゃってよ!遅刻しちゃうよ!?」
「なら遥輝に言えよ」
『あ゛?』
指をポキポキと鳴らすと、大輝は慌てるように朝飯を食べ始めた
「さっちゃん、ごめんね?こんなバカ二人で」
「いえ、いつものことですから」
時計を見ると、登校時間が迫っていた
『じゃあ、オレ行ってくるよ』
「本当にいいの?入学式行かなくて」
『オレはいいよ』
誠凛と桐皇の入学式は今日
母さんには桐皇の入学式に行ってもらうように頼んだ
『母さんとさつきがいりゃ、大輝はイヤでも入学式出なきゃならねーしな』
いつしかサボり癖が悪化した大輝
今日も入学式だと言うのに、サボろうとしていた
『じゃあ、行ってきます』
「行ってらっしゃい」
「気をつけてね」
大輝はさつきに急かされながらも朝飯を食べいた