IF…

□プロローグ
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中三の秋

もうこんな時期だと言うのに、オレはどこの高校に進学しようか迷っていた






「青峰、お前くらいだぞ?進路が決まってないのは」




夏休み前の進路調査を白紙で出したのはオレくらいなもんだ

そんなオレを心配したのか、放課後、帰ろうと教室を出ようとした時に担任に捕まり、教科担当室へ連れてこられた




「ウチの学校は、どの部活もお世辞でも強いとは言えない。お前達の女子バスケットボール部も例外じゃない。にも関わらず、お前の実力に惚れ込んだいくつもの学校が推薦を出してきている。何をそんなに迷う必要があるんだ?」




担任の言うように、ウチのバスケ部は、たいがい初戦敗退

三回戦まで勝ち上がったら奇跡みたいなもんだ

なのに、オレの元にはいくつもの推薦の話が上がってきた




「あまりお勧めしないが、あの高校に行くか?」




担任の言う、あの高校とは、オレが中学に上がった時から行きたいと願っていた高校だ

できればそうしたいが、この前の面談で、オレの成績では厳しいと言われてしまった



『それでも、少しでも望みがあるのなら…』

「わかった。じゃあ、この進路調査用紙に記入しなさい」




担任に言われるがまま、用紙に記入していると、質問された




「なんで、そこまであの学校に行きたがるんだ?確かに、あの学校は進学校だし、有名大学にも何人も合格してる。けど、青峰の今の成績だと入学出来ても、おそらく底辺だろう。それでも頑張って上位に入れば話は別だが、底辺のままだと、ロクな大学に行けないぞ?だったら、学校を一つ下げて上位にいた方が、いい大学に入れる」

『別に、いい大学に入りたいなんて思ってねーし』

「なら、なんで…」

『私服だから』

「は!?」




オレの思わぬ志望理由に担任は呆れたように肩を落とした




『スカートなんて履きたくねーし』




今のオレの格好は学校ジャージだ

本来、ウチの制服は男子は学ラン、女子はセーラー服だ

けど、スカートなんて履きたくないオレは常にジャージ

仕方なく制服を着なければならない時は、スカートの下にジャージを履いている

そして、オレの行きたい高校は私服だ

私服なら、オレがどんな格好をしていても怒られることはない

だから何としてでも、あの学校に行きたいのだ




「お前のスカート嫌いはよく知っているが、だからと言って、そんな理由で高校を決めるなんて…」

『オレにとっては重大なことだから。はい、書いたよ』




書き終えた用紙を担任に渡すと、その用紙を再び突きつけられた





「併願校が書かれてない。このままだと、下手すりゃ高校浪人だぞ?」

『併願校ねぇ…』

「考えてなかったのか!?」




この数十分の間に、何回担任のため息を聞いただろうか





「ここはどうだ?」




考え込むオレを見て、担任が一冊のパンフレットを差し出してきた





『誠凛高校?』

「そうだ、この学校は去年出来たばかりの新設校だから知名度は低い。だが、ここを見ろ」





そう言って、担任が開いたページは制服が掲載されているページだった




「近年、女子の制服にパンツスタイルを取り入れている学校が増えて来ている。この近辺では誠凛高校くらいだろうな」




誠凛の制服は、男子は学ラン、女子はセーラー服

その女子のセーラー服の横に、パンツスタイルの制服も載っている

だが、元々がセーラー服なために、その格好は海兵か、戦時中の女学生を思わせる格好だった





『なら、併願校はここにする』





その格好がどうであってもオレにはスカートを履くより幾分かマシだった

担任から受け取っ進路調査用紙に誠凛の名前を記入すると、再び担任に用紙を渡した




「確かに受け取った。さぁ、これから死に物狂いで勉強しろよ?」

『もちのろん!!』
 

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